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STEP(第207号)

減災と防災-フォレストベンチの大いなる可能性②
-津波対策・防潮堤に代わるもの-

フォレストベンチ研究会 理事 河西悦子

 

新年号「令和」になって半月たちます。年号についての解釈もいろいろ言われていますが、どのような時代になっていくでしょうか?

この5月4日と7日、大月近辺で雹が降りました。気象変化もますます激しくなっていきそうです。政府の地震調査研究推進本部は2月26日、青森県東方沖から房総沖にかけての日本海溝沿いで、今後30年以内にM7クラスの地震が発生する確率は90%超という驚くべき予想が公表されました。沿岸部に暮らしている人々にとって、地震と津波は一体です。できる限り早急な防災対策が急務ですが、津波への防災対策として国や県が推し進めているのは、まずは防潮堤ではないでしょうか。

―伊豆半島の地震津波対策―

以前、フォレストベンチの総会で、「東日本大震災からの教訓―防潮堤を勉強する会(気仙沼市)がたどった経過―」と題しての三浦さんの「宮城県で進められている防潮堤事業は、決して実例として東北から出して欲しくないと願っている。」という言葉は今も耳に残っています。

残念ながら、静岡県では、もう既に遠州灘の海岸線に、かなりの距離の防潮堤がもう既に作られてしまっています。伊豆半島では南伊豆町・下田市等、津波対策地区検討会が、地区毎に行われ、その検討会では静岡県の静岡方式(右図静岡県のHPより)が提示され関係者が協議検討、平成29・30年、静岡県の下田土木事務所のHPに各地区の津波対策の基本方針が公表されています。東北や遠州灘のような巨大な防潮堤ではありませんが、一部地域では、コンクリートの津波対策施設として、以下のようものが設置されることになったようです。

 

下田港地区現況 (下田港地区の津波対策基本方針より転載) 津波対策施設設置イメージ

この3月、NHKで震災8年目の特集番組で、―伊豆の国市の津波対策、最新の備えー取り上げられていたのが、たまたま目に留まりました。以前から、下田や南伊豆の津波対策として地元の人に提案するため考えていたこと、栗原さんに色々検討いただいていたことと同様のことが、伊豆の国市の対策の中に盛り込まれています。

伊豆市“海と共に生きる”~観光防災まちづくり推進計画~第2版平成29年12月
観光・環境・防災のバランスのとれた海と共に生きる街づくりの実現に向けて
―4つの取り組み方針―

1.共生する:リスクを理解し、工夫を積み重ねて安全性を高めるエリアの形成

2.逃げる:住民、観光客、従業員などの安全性を確保するための警戒避難体制の構築

3.生き延びる:地域が早期復旧するための支援機能の向上

4.守る・減らす:地震・津波・土砂災害による被害を少しでも減らすための防災・減災対策の推進防災も観光資源として活用、積極的な情報発信、地域の産業の活性化につながるよう観光と防災を関連付け、防災が観光の一翼を担う体制を積極的に創出する。

 

栗原さんの提唱する、パーキングエリアは、まさに観光・環境・防災のバランスのとれた海と共に生きる街づくりに相応しいものではないでしょうか。

伊豆半島の津波対策として、街中に行くまでの途中の海岸線沿いの道路についての取り組みは見えてきません。下田に行くとき、東伊豆の海岸線を車で走っていると、時々、今大きな地震が起きたらと不安に駆られます。観光地として、そこへ辿り着くまでの道路・線路が津波の危険性があるエリアであれば、その対策が必要です。

 

その対策として、栗原さん考案の最新版≪無限につながる命のパーキング≫構想。

地震発生から津波襲来までの短い時間で、車で走行中のあまり地理感も無い観光客などが助かり、また地元の人々も生活の中で移動中の道路の津波対策。標高30メートルまで1分以内に走行で到達できる幾何構造、一定の間隔で避難用階段と共に整備されていれば、観光資源としても活用できるのではないでしょうか。海岸線に囲まれた日本で、コンクリートのり面の劣化問題を恒久安定させる方策としても有効であり、防潮堤を作る費用に比べれば、格段に低価格で実現できるのではないかと思います。

 

「フォレストベンチ工法」普及の仕組みづくり

自給シニア会 代表 戸村澄夫

「自給シニア会」が、一昨年の総会で承認されて誕生してから2年が経過いたしました。

昨年の総会では、「実績2件ありました」と報告させていただきました。横浜市泉区の山村邸の駐車場裏のフォレストベンチ工法による工事と正法寺の参道の工事です。

今年は実績として田園調布の正善寺に係るパイプグリッド工法による工事がありました。自給シニア会メンバーの入井さんのご関係から、同じくシニア会のメンバーである大島利男社長が施工された田園調布の照善寺の50年前のコンクリート打ち放しの擁壁のパイプグリッド工法による工事です。これは、田園調布という瀟洒な街にふさわしく廃墟然としたコンクリート擁壁を最終的には間伐材できれいに化粧して仕上げようとするものです。フォレストベンチ工法が「多岐」にわたってきております。

ここでは、「自給シニア会の役目」について申し上げます。皆さんにご理解を深めていただくためには繰り返し繰り返し申し上げることが必要と思います。そして、ご理解を深めていただくことによって初めて「自給シニア会」へのご協力が期待できるものと信じております。

繰り返しになりますが、もう一度自給シニア会の意味について申し上げます。

 

①自給シニア会の「自給」とは、「森」のことです。「もともと地球全体が森であった。その森に戻る」ということです。人類が「森=自然」を減らしてきたので「自然に任せて自然の力で“森”を取り戻そう」ということです。

 

②斜面修復工事に際し、コンクリートによる従来工法に決別して段々の棚田方式により「森を作り地球全体を森に戻そう」とする試みです。

すなわち「フォレストベンチ工法」そのもののことです。

 

③「シニア会」の意味は、年配者は、長い人生経験により築き上げた豊かな人脈がありますから、その人脈を通じてこの「フォレストベント工法」を広く世の中に広めてゆこうという趣旨です。

 

私も微力ながら、千葉県で、県の幹部である「災害・建設担当部長」との人脈があります。

最近栗原理事から送っていただいた「コンクリートのり面の点検・改修を 「巨大津波への「津波避難路」に生かす」ご提言 等の情報を同部長に送って、「フォレストベンチ工法」の啓蒙に努めております。

 

栗原理事が繰り返し説いておられるように、海岸線を車で走行中巨大津波が来ることを知った場合、ドライバーはどういう行動をとるでしょうか?人情としてまず車で安全な場所に逃げられないかを考えるでしょう。ましてや斜面がコンクリートで覆われていて山によじ登れないような場所ではなおさらです。そこで、傾斜10%の車路を高さ30mまで走らせる方法を考案しておられるのです。巨大津波の情報が入ってから1分以内に標高30mの高台に避難出来たらどれほど多くの方が助かるか知れません。

本件については、現在、栗原理事が国交省の担当課長に説明する運びとなっております。

これらのことを知らせることは、「フォレストベンチ工法」を広く知らせるためだけではありません。

必ずや、「災害・建設担当部長」という立場におられる方のためになる“情報“と思うからです。

かつて、STEPに掲載していただいた米国大統領ジョン・ケネディが最も尊敬する日本人として挙げた「上杉鷹山」の「三方良し」の考え方によるものです。

 

「フォレストベンチ工法」だけを広めようとしても相手の心に伝わるものではありません。「災害・建設担当部長」という立場におられる方にとって「真にお役に立つ情報」は何かを考えて伝えていかないと目的は達成できません。

上杉鷹山も家臣に繰り返し繰り返し「倹約の必要性」を説いて財政立て直しを達成しております。

④次に「自給シニア会」の存在意義について申し述べます。

これも昨年申し上げたことですが、「フォレストベンチ工法」を広め、実績作りをするための「持続可能性」を確保するための“制度作り“です。

 

⑤会員の紹介により、フォレストベンチ工法が採用された場合、成功報酬として請負金額の3%が紹介者に支払われます。1000万円の工事であれば30万円です。これは、成約に至るまでには時間と労力と経費が掛かりますのでその対価としての支払です。

 

⑥次に事務経費の捻出です。工事が成約に至った場合は、報酬額の計算やその支払業務が必要となります。そのための人件費等の費用に充てるためのものです。報酬額の5%(15,000円)が事務費として徴収されます。

 

⑦自給シニア会」は、「フォレストベンチ工法」が将来に向かって広く世の中に知れ渡っていくための「仕組みづくり」の役割を担っております。私たちは、こうして「持続可能な制度」を作って、さらに良いものに維持発展させていこうと思っております。

 

⑧それにはまず、この会報を見ていただける皆さんにこの制度をよく知っていただき、身近な方にお話しいただくのが何より大事なことと思います。

引き続きみなさんのご支援をお願いいたします。

 

すばらしい命のリレー

フォレストベンチ研究会 自給シニア会 会員 入井徳明

 

フォレストベンチ工法は、コンクリートを用いない「土木工法」として、そのスタートから異彩を放ってきた。考案者の栗原理事がコンクリートを極度に遠ざけていたのが原因と思われるが、最近になって少々風向きが変わったように感じる。国交省がコンクリートのり面の点検に乗り出したことと関連するようであり、私も関心を抱くに至った。

 

戦後の高度経済成長期に合わせて社会資本整備が急進期に入ったとき、コンクリートはのり面の早期安定化の為に大量に使われ始めたが、それが50年という年月を経て老朽化し “余命幾許も無くなる”と同時に、極めて危険な状態に達している。しかし本人に話を聞いてみると、コンクリート余命の中に残っている“付着力”を引き出して最後まで使い切り、“天寿を全うさせよう”という心積りのようであった。

 

つい先ごろ、“老朽化したコンクリート”にドリルで穴を開けて鉄筋を差し込み、グラウトで膠着状態にし鉄筋を引っ張ってみたら、5本の鉄筋は全て3トンの引っ張り力を発揮したことから、コンクリートは50年を過ぎても使えると確信したらしい。外見上は風化・劣化して今にも崩れそうだが、国が定める規定値の14kg/㎡に対し、それを大きく超える40kg/㎡が確認できたという。

 

大学では同じ教科書で単位を取った間柄であるが、私の方はこの付着力にお世話になることはなく、剣道に置き換えれば“鍔迫り合いのクリンチ”のように、粘りを発揮する存在のようである。

一方彼は、入社した道路公団での初めての現場で土中アンカーを使用した際、“付着力”と出会っており、高速道路開通の窮地を救ってくれた“付着力”に、今もって恩義を感じている様子である。

それは、東北道の建設予定地に突然出現した“柳田館”という中世の山城跡を保存するための“連続地中壁をアンカーで直立”させた時の経験である。 その付着力が50年を経た後でもコンクリートの中に残存していたことを知ったとき、彼は新たな知見が得られたとして、欣喜雀躍したという。

 

コンクリートのり面の主流は、“フリーフレーム”という格子状の柱を網の目のように斜面に張り付ける工法であるが、その柱にドリルで穴を空けて鉄筋を差し込み固定すれば、それを反力として新たな鉄パイプをフレームとして固定でき、若い命を吹き込める。次に、階段状の水平な植生基盤に育つ樹木が生長して根を伸ばすと、鋼材より強靭な反力が生まれる。これまでのフォレストベンチ工法の事例で見ると10年以内で森が形成されているから、コンクリートの付着力があと10年命を永らえてくれたら、緑の命がのり面を恒久安定させてくれる、というのが彼の目論見である。

岩をつかむ木の根は、斜面の中に食い込んでいく

 

コンクリートに差し込んだ鉄筋の安定度は、ドリルの穴が地中へ向けて空けられるので、力学的には重力の援助が得られるしくみであり、定期的に確認すれば安心である。50年を過ぎたコンクリートがあと10年頑張ってくれた後は、樹木が2~300年の寿命に加えて世代交代を繰り返し、恒久ののり面安定、つまり継続的な延命策が実現する。付着力を使い切ったコンクリートは、何れ階段状の土の斜面に埋れて地上から姿を消し、地表を緑に戻してくれる。

これまで、“生命とは無縁”と考えていたコンクリートが、最後の僅かな10年で、我々人間にとって極めて重要な緑を育てる命のリレーの要を担ってくれるとなれば、何とも素晴らしい命の使い道ではないだろうか。

 

現場だより(令和元年5・6月)

 

◆今年の梅雨入りは、冬から春までの降水量が例年を下回っていたことから、6月の声を聴く前に、あっさりと沖縄に梅雨前線が張り出し、屋久島は大雨に急襲された。

 

◆その余波は列島を縦断し、天気予報をことごとく狂わせて、東日本各地に思わぬ雨量を運び、結果としては災害にはならないお湿りをもたらせてくれた。

 

◆その直前には、南海トラフ地震の先端が弾ける様に宮崎県の日向灘沖で震度5弱の地震が発生し、地震は熊本で起きるものと安心していた宮崎県民の多くを震撼させた。

 

◆南海トラフで巨大地震が発生すると、日本列島で堰き止められ誘導される津波が、日向灘に面する宮崎平野を直撃することとなり、観光地の日南海岸から県北の延岡市に至るまでの市街地が、ダメージを受けることになります。

 

◆宮崎県は、これまで“台風銀座”という異名を戴いておりましたが、南海トラフの活動と連動して地震と津波災害に巻き込まれないよう、宮崎県人として厄よけに相応しい異名を用意して置くべきと思います。

 

◆神話で有名な宮崎県ですから、豪雨も除けてくれる見事な異名が、見つかることと思います。

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