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STEP(第205号)

「火の文明」からの卒業-100万年ぶりの大変革

フォレストベンチ研究会 会長 村沢義久

随分遅くなりましたが、新年のごあいさつを申し上げます。

私の住む軽井沢は標高1000メートル近い高原で、丘や山の間に住宅や別荘が建っているような町です。西隣の佐久市へ行く道は何本かありますが、裏街道を行くと急斜面の連続で、セメントで固められた崖をよく見かけます。フォレストベンチ工法を教えてあげなければなりません。

火の文明

ところで、私は太陽光発電と電気自動車(EV)の推進をライフワークとしています。フォレストベンチとは直接関係はありませんが、どちらも、地球環境を守る、と言う共通目的を持っていると思っています。

私の考え方の基本は、「ものを燃やさなければCO2は発生しない」ということです。火力発電は化石燃料を燃やして電気をつくり、自動車はガソリンや軽油を燃やしながら走っています。そこで、私が提唱しているのが、「火を使わない文明」です。

人間は火を使う唯一の生物だと思います。人間の特徴を表す言葉はいくつかあります。「道具を使う」、「言葉を使う」、etc. しかし、これらは絶対的なものではありません。

チンパンジーは木の枝などの「道具」を使って、アリやシロアリ を釣って捕食します。また、カラスが、線路の上にクルミを置いて電車の車輪で割って実を食べることも良く知られています。これらは、原始的ながら、動物による道具の使用例と言えます。言葉についても、動物たちは鳴き声などでコミュニケーションをとっているから、人類特有とは言えません。

しかし、火の使用は違います。動物の中にも、自然発生した火を何らかの形で活用しているという例はあるのかも知れませんが、少なくとも、自ら火を起こして使う生物は人間だけです。

人類が火を使い始めたのは大体100万年ぐらい前のことと推定されています。つまり、「火の文明100万年」ということです。

火の役割

火の役割には大きく分けて3つあります。1番目は光源、2番目は熱源です。3番目は祈りなどの「儀式」の小道具ですが、環境とエネルギー問題に対する影響は小さいので、ここでは光源と熱源の2つについて考えてみましょう。

初期の人類にとって、夜の闇は大きな恐怖でした。そこで、焚火やたいまつを使うと明るくなり、夜でも周囲が見えるようになります。しかも、多くの動物が火を怖がるから身を守ることができたのです。

夜は寒くなるので、暖房のための熱源としても火は必須でした。熱の利用の一つの形態が調理です。それから武器。大昔から火矢が使われ、火薬が発明されると、殺傷能力が急増しました。さらに、現代では熱は動力源として使われており、これで工業が発達しました。

このように、人類の文明は、火の使用と共に始まったのです。すなわち「火の文明」の幕開けでした。

 

脱「火の文明」

人類は火の使用により、計り知れない恩恵を得ましたが、プラスがあればマイナスもあります。特に、近年では、燃焼によって発生するCO2が地球温暖化の原因として大問題となっています。我々が使う燃料は、石炭や炭はもちろん、石油やガスにも水素とともに炭素が含まれます。つまり、ものを燃やすからCO2が発生するのであり、逆に言えば、燃やさなければ、CO2は出ない、ということになります。

私の提言は、100万年ぶりに火の使用をやめよう、というものです。代わりに使うのは電気です。光も熱も電気で供給できます。自動車の動力も現在は内燃機関中心ですが、徐々に電気モーターに置き換わりつつあり、2050年までには、主要国を走る車は全て電気自動車になります。

このように、光源、熱源を電気で賄うようになれば使用現場でのCO2の発生はなくなります。ただし、発電所で化石燃料を使ったのでは台無しです。だから、自然エネルギーで賄わなければならないのですが、その中でも一番実現が容易なのが太陽光発電というわけです。

最後になりましたが、本年が皆様にとりまして良き年となりますよう、願っております。

温暖化対策の切り札は太陽光発電とEV 車は筆者所有の「ビートルEV」出所:筆者撮影(@軽井沢)

 

現場報告「コンクリート廃墟との格闘」

個人会員 ㈲大島技工 代表取締役 大島利男

 

昨年のフォレストベンチ研究会総会が開かれた翌日(6月21日)に、入井さんとその友人の建築士、そして栗原理事と共に、大田区の田園調布駅の近くで待ち合わせをしました。慣れない道を走り迷いに迷った末に3人と合流した時は、先陣が現地調査を終わった後でした。(この場を借りて深くお詫びします)

 

目標の場所は、「照善寺」という当地の名刹で、江戸幕府が築かれると同時に開かれたお寺だと聞いていたので、さぞかしひなびたお寺のどこかが崩れていて、その修理を担当するのではないかと、お寺の境内を想像していました。しかし現場に近づいてみると、何とコンクリート打ちっ放しの擁壁で囲われる一画が、見えてきました。

周囲との段差を稼ぐために設けられたもたれ擁壁だが、施工時に付いた模様は50年が経っても変わらず、自然石には存在しない人工的痕跡が残っている

 

地理的位置を整理すると、田園調布という街は、東京都南縁(へり)にあって、世田谷区から西部に至るに町田市などの多摩丘陵、また北部には新宿副都心が臨めて、羽田空港とは隣接して、東京湾の玄関口となっています。多摩川を眺望する高台に立つと、多摩川を挟んで川崎市や横浜市の街並みが遠望できます、暫くして陸路を経て行ってみると混雑で有名な「環状8号線」が意外と便利で、第三京浜を使うと自動車交通にも至便であることが分ってきました。

 

さて、コンクリート打ちっ放し擁壁の件に戻りますが、施主から直々に伺った話では、施工して50年が経っているとのこと、住職は女性であり何の衒いも無く語ってくれましたが、コンクリートを打ちっ放しにして野ざらしにした場合、50年も経つとコンクリートの痘痕(あばた)は廃墟然としており、かなり醜く映るものです。贔屓目に見て「痘痕もえくぼ」と言っても、他人の持物となると“途端に”厳しくなるものです。

 

田園調布という最新鋭の住宅地において、コンクリートの痘痕を放置することは、瀟洒な住宅がひしめく風致地区の景観を台無しにしてきた点を早急に改善すべきと思いました。しかもその下の約50坪もの敷地を囲うコンクリート擁壁は、厚さ20cm程の「箱型擁壁」となっており、道路側とその直面方向のコの字型が50年の年月を経て外見も安定度も懸念される様相です。そこで入井さんと栗原理事と私は、無言のうちに目で合図して、パイプグリッドの出番という合意に達していました。

 

その後入井さんご友人の“建築士”が大田区役所へ呼ばれて「着工前風致対策」を聞かれたときに、コンクリート面は間伐材で覆う案を誇らしく提示したようですが、審査官の反応は「パイプグリッド工法のアンカーの健全性が確認できなくなるので、間伐材を見送る様に」との指導であった由です。アンカー頭部が緩むことは考えられないし、それは定期点検でチェックできることです。風致条例の重みをどのように考えているのか、実に不思議な裁定です。間伐材を用いれば、見違えるような景観が誕生し、風致地区が面目を施すこと請け合いです。

道路幅を超える4mの垂直壁が、住宅街に忽然と現れる。 柔らか味 ・温か味を滲ますには、木材 (間伐材)の木目に頼るのが良い。

 

施主が女性の住職なので、自然に風化・劣化したコンクリートの姿をみても、当然の成り行きと捉えておられたようです。しかし、近年の首都直下型地震や記録的短時間豪雨の恐ろしさには強く反応されて、しかも入居している住人からの不安な声を聴くに及んで、防災・減災への緊急性を感じ、その道の専門家である入井さんから栗原理事へと、要望が伝わった様子でした。

 

地震について最近大阪や熊本で直下型が続いており、これがもし、もたれ擁壁を襲ったとすると、重量物のコンクリートを放置した場合、大きな禍根が残るであろうと思われます。パイプグリッド工法は、これまでに6箇所程の施行例がありますが、コンクリート壁を貫いて奥の地山へ約5mの延長でアンカーを差し込み、前面のパイプグリッドと地山とを直結するので、その途中に位置するコンクリート壁は、更に安定して耐震性を発揮するようになる、というのが奥義であり妙義です。更に言えば、コンクリートに残存する圧縮力の全てが働くので、高齢者を経済性と共に安全性を維持してくれます。入井さんは千葉成田山新勝寺近くの永興寺において施工したパイプグリッドに、甚く感銘して、その虜となった一人です。

 

凡そ1か月前から田園調布という異趣の地に住んで感じたことですが、コンビニへ行けばどこでも手に入るモノでも物価が高く不便この上ないし、工事の騒音に関しても規則が煩く、土日は工事内容が制限されます。照善寺の借家人からのクレームに対してもお寺はハレモノに触るかのように神経を尖らせています。パイプグリッド工法は、削孔が先行しますが、早く静穏な作業に移りたいと願う毎日です。

 

 

減災と防災-フォレストベンチの大いなる可能性

フォレストベンチ研究会 理事 河西悦子

 

今年は平成が終わり、新たな年号の年が始まります。

平成の年月を振り返ってみると、あちこちで自然災害が多発した印象があります。阪神・淡路大震災が起きたのは、24年前の1月17日。東日本大震災もこの3月で8年になります。毎年のようにあちこちで様々な大規模災害が起き、気象変化も激しくなってきているように思われます。

 

【大月市内台風による斜面崩壊のその後】

2016年7月の台風では、我が大月市内において、線状降雨滞の影響により、人的被害はなかったものの、岩殿山周辺で何か所もの斜面崩壊の被害が起きました。未だかなりのところは復旧していません。復旧のための工法について、フォレストベンチの栗原さんにも参加して頂き、昨年7月、県・大月市を交えて勉強会『岩殿再生フォーラム』を開きました。しかし、残念ながらフォレストベンチ工法は検討の俎上にも載りませんでした。

 

道路公団の管轄の場所の崩落は現在このような修復(と言えるのか?)がされています。岩殿山に登る人たちの駐車場の前ですが、がっかりしてしまうようなコンクリートの吹付です。

 

市内には、あちこちに未だ崩落がむき出しのところが目につきます。我が家近くの住宅地裏手で、台風の後、小規模の斜面崩落のところがあり、しばらくブルーシートが掛けられていて気になっていました。数日前そのブルーシートが剥がされ工事が始まっていました。直接影響を受ける直近の住宅の方に話を聞くことができました。斜面は県有地ということで、県の工事です。我が家のフォレストベンチのところも知ってはいたようです。「我が家と同じようなふうにやると聞いている。」しかし、我が家の状況やフォレストベンチについて説明しようとしたのですが、「県の方でちゃんとやってもらえるから大丈夫だ。」と全幅の信頼です。自分に関わってくるようなことでも、公共が関与することについては「お上任せ」「お上のやることなら大丈夫」ということがまだまだ蔓延しています。工事関係者に聞いたところ、コンクリートのフリーフレーム、その中に草の種を植えてということです。ここなどはフォレストベンチ工法の適地と思っていたのですが残念でなりません。

 

 

これからの時代、人任せで自分や家族の身が守れるでしょうか?どのように自然災害と向き合っていくのか?市民一人一人がしっかりとした自覚を持ち、自分自身で判断もしていかなければならない時代に入っていくのではないでしょうか。公共の関与する工事ならばなおのこと、影響が大きくなります。自分に関わることにはしっかりと目を届かせていかなければなりません。そこで、フォレストベンチの減災・防災についての役割も見えてきます。

 

フォレストベンチ工法等を普及させるためには、具体的メリットを一般の人々にわかりやすく(簡単なパンフレット等)、そして同時に決定権を持っている人(議員・首長)に知る機会をできるだけ作っていく必要があります。

 

【これからのフォレストベンチの役割-減災・防災の工法として】

①土石流障壁:透水性鋼製柵

土石流災害から命を守る最も確実で経済的な方策として考えられた透水性鋼製柵。日本中斜面災害の危険性はいたるところにあります。我が山梨県・大月市などは平坦地の方が少ない地形故、斜面を切り開いて住宅地が作られているところも少なくありません。ハザードマップも危険区域・警戒区域だらけです。しかしどこか引っ越すといっても庶民はままなりません。大なり小なり山を背にしてかなりの家は建っています。

 

巨石の衝撃を至近距離で受け止めて、家屋ごと命を守ることができれば、大きな減災となります。

北海道での実証実験で示した物より更に3倍もの高効率構造になって安全性がさらに高まったというのは減災・防災の大きな味方になるのではないかと希望が持てます。

 

②海中防潮堤

海中防潮堤。宮崎県議会で発表なさったと聞きました。専門的な内容の把握はできませんが、考え方として海の中で水の力をいなす・海の生物とも共生できる考え方、素晴らしいと思います。確か新日鉄さんの関係で海の生物を豊かにするために鉄の漁礁を海に沈めて実験しているということを聞いたことがあります。海を豊かにするとともに津波を減災していくことが可能ではないでしょうか。

昨年の12月、インドネシアで起きた火山の噴火による津波、大きな地震が起きないで起きた津波などに対しても、海の中で津波を制御していく考え方、効果が発揮できればいいなと期待が高まります。

 

災害をなくすことはできません。しかし被害を可能な限り少なくしていくことは可能です。

新時代に向けて、フォレストベンチ工法の減災・防災への大いなる役割ではないでしょうか。

 

 

現場だより― 世の中を変えるのは、命の代償なのか ー

 

◆コンクリートブロック塀が倒れた事故を知ったのは、約20年前の宮城沖地震であり、仙台市で凡そ10名の命が失われた時だった。

 

◆昨年、大阪北摂地震で通学時の女児がブロック塀の下敷きとなり、犠牲となる事故の後、漸く役所も放置できずに全てを撤去する措置に出た。女児の死があまりにも幼気(いたいけ)過ぎたからかも知れない。

 

◆気になるのは、東日本大震災後の防潮堤が高さ14.5mのコンクリート製で築造されつつあること、延長400kmに1兆円を超える資金が投じられていること。

 

◆津波で失われた凡そ2万名の犠牲者を弔うための代償とも言えるが、それによって美しい景観も世界有数の漁場が打撃を受けた上に、百年後の巨大地震で人々を津波から救う可能性は難しいとされている。

 

◆百年後の尊い命が救われるならまだしも、陸中海岸の自然を失い、地域の未来を奪いかねない暴挙はどこかで見直しをする必要があると思う。

 

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