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STEP(第203号)

たくましき生き物 ヒト

フォレストベンチ研究会 自給シニア会 会員 公文國士

日本列島に、ヒトが渡ってきた時期を特定できそうな重要な手掛かりが発見された。それは、沖縄県、石垣島で発掘された「白保人」と命名された旧石器時代の19体の人骨である。どうやら、当時は大陸と地続きであった台湾から海を渡ってきたと考えられている。まず最短の与那国島(110km.の距離)、そのあと飛び石のように続く島々経由で渡ったものとみられる。それを裏付けるものとして、各島々に古代人の居住を示す痕跡が発見されているという (TV番組 2018.7.12月15日放送、011ch NHK スペシャル 人類誕生 第3集「ホモ・サピエンス ついに日本へ!」)。

左は白保人 人骨写真資料 白保竿根田原洞穴遺跡で見つかった約2万7000年前のものとみられる人骨 (沖縄県立埋蔵文化センター提供)
https://www.sankei.com/life/ news/170520/lif1705200042 -n1.html

従来からヒトが日本列島にわたってきた経路には、南経由と北経由の2つがあると考えられてきた。南経由は黒潮の流れに沿った琉球諸島、薩南諸島を伝う道。もう一方は、太古の時代、陸続きであったサハリン(樺太)の北回り経由である。

 

こういった移動を可能にさせた要因として、番組は、2つの道具の発明を挙げている。1つは、石斧。これによって丸木舟の製作が可能となり、黒潮を乗り切ることができたこと。そしてもう一つは、動物の骨から作った縫い針である。

 

実験考古学の実践として、最初は草船、次に竹船で挑戦したが、黒潮を乗り切ることができずに頓挫した。これを克服したのが丸木舟である。縫い針は、酷寒での生活を可能にする防寒着、防寒具の制作が可能となり、極北での移動を容易にした。

 

人類は、生物学的な種としては、ホモ・サピエンス(Homo Sapiens)、和名はヒトという。約700万年前のものとされる最古の化石人類を含めて、現在まで25種類が見つかっている。これらの化石人類すべてと現在のヒトをまとめて、人類というそうだ。(【「絶滅の人類史」なぜ「私たち」が生き延びたのか】 更科 功 NHK出版新書)。

 

ホモ・サピエンスは、現存する人類としてはこの1種だけである。他の種はすべて滅んでしまっている。従って、唯一の生き残りであるこの種は、いわば希少生物とも言える。しかし、極めて旺盛な繁殖能力と厚かましいまでの生命力、行動力を発揮したお陰で、地球のあらゆる場所にまで進出した。その数は今では76億となった。希少性などは微塵も感じさせない。

 

ホモ・サピエンスが他の人類種と違う大きな特徴として、脳内のブローカ野と呼ばれる部分の機能が挙げられる。言語表現を司る部位である。これが卓抜していたため、大きな優位性を得たとされている。

 

あわや絶滅か。と思われるほどの天変地異を乗り越えて、今日まで生き延びてきたのが、ヒトである。

石垣島で発掘された人骨のデータから復元、3次元プリンターを使って出力された 「国内最古の顔」 (国立科学博物館提供)

 

昨今の災害発生は尋常ではありません。今年だけでも、直近に発生した自然災害は、以下の通りです。

*2018年6月18日 大阪府北部地震、

*    7月2日 九州北部豪雨、「段波」発生、

*    8月.6日  西日本豪雨、広島、岡山、愛媛 14市町村に被害、

*    9月4日 台風21号、徳島県南部に上陸、神戸再上陸、大阪府、

*     関西空港、府内各地で深刻な被害を被る。

*    9月.6日 A.M.3:08’頃 北海道、厚真町で震度7の地震。北海道

全域で停電。日本初のブラックアウト発生。

実は上記の被災地の中に、施工済みのフォレストベンチの場所が含まれていました。それは、大阪府豊能郡能勢町の東 康平氏自宅裏山斜面です(Step 第132号2011年9月掲載)。

台風21号(2018年9月4日、徳島南部上陸、神戸再上陸 945hpa)が、ここの真上を通過したのです。しかし損傷被害は、全くありませんでした。

この 工事は、2010年10月初旬~同年12月26日迄に行ったものでした。

元請:中林健設、施工は(有)大島技工。

工事面:60㎡・段差4段・延長70m。(第148号掲載)。

原因:2010年5月の大雨により自宅裏山斜面(八幡神社の下)が崩落。種々の復旧工事法を模索した結果、フォレストベンチ工法を選択。(Step 第148号2013年1月の東氏原稿より)

災害対策には、可能な限りの防御態勢を取り、避難場所を設定し、避難経路を確保しておく必要があります。止むを得ず防御が破られ、破壊されたものは、ホモ・サピエンスの歩みに倣ってまた作り直す。と、達観しておいたほうが良いのかもしれません。

「鋼製柵を用いる土石流シェルター」の考え方

フォレストベンチ研究会 宮崎支部 川添祐一郎

近年、記録的短時間豪雨等によって起きる「土石流」が家屋を直撃し、多くの命と貴重な財産が瞬時に奪われる悲惨な被害が多発しています。本年7月初旬に発生した西日本豪雨被災では、死者と不明者は合わせて230名にも昇り、4年前の広島豪雨被災者数74名に対して3倍に達しました。傾斜地が国土の7割を占めるわが国で、このまま豪雨の脅威が続くとすれば、土石流による惨禍は増える一方です。つまり“里山”で暮す多くの人々は、気候変動による記録的短時間豪雨や巨大地震の影響を受けて、極めて危険な状況に陥っていると考えます。暮らしの基本である命と財産が脅かされて、社会は安全と勢いを失うこととなります。気象災害に直面した時に最も頼れる家屋の安全が最重要課題になったのです。

 

土石流による被災が何故こうも重要課題となったのか、その背景を挙げるとすれば、土石流の正体が良く掴めていないことがあります。インターネットの記述でさえ「凄まじい破壊力を持つ土砂が、一瞬にして多くの人命・住宅・財産を奪ってしまう恐ろしい災害」と紹介しており、昔から山津波と言われるように、途方もなく大きくて定義し難い規模の災害として扱われてきた歴史が感じられます。桁外れに大きく“酷い”といった範疇になると、良く分らない災害として分類され勝ちですが、その時に土石流が登場してきたのであろうと思われるのです。つまり山が動くほど大きな崩れは、地表を構成する地質・地形の成立ちや自然力・時間軸とが複雑に絡んでおり、未だ人類にとって未知の世界のまま、脅威のみが先行している「災害」と位置付けられます。すなわち人類にとって初めてと言える“記録的短時間豪雨”と未解明状態の土石流とが融合して起きる“未曾有”の災害に如何にして臨むか、難しい課題に直面していると、認識しています。

 

しかし被害の発生が進行している以上、具体的な対策が求められており、これまで学び得た知見に基づいて、対策を組み上げて行かねばなりません。我々が4年前にチャレンジした札幌市手稲区で実施した落石実験は、傾斜43度落差30mの規模を対象にしましたが、これは、土石流の中で人命・財産に致命的損害を与えるのは、“水や土砂”よりも巨石落下による衝撃であるとの判断によるものでした。(希望者にはDVDを配布します)

 

人々が最も頼りにする家屋は如何にして守れるのか、私は次のように考えます。

 

①家屋の裏山からの土石流を、その背面で止める方法として有効なのは、家屋背面の至近距離で、土石流衝撃を止めることです。至近距離で受ける利点は、土石塊が速度を増す前に弾力性を発揮してミットのように用いて衝撃エネルギーを捕え、それを的から外さないで、その動きを鎮めることです。(「落差30mが目安とするのは、札幌市手稲区における実験で得た規模です。」)

 

②次に、より広範囲「落差50mが目安」からの土石流を対象とするときに、流れ崩れる土石流を図-2に示す階段状水平ポケットに分割収納することです。(「落差50mとしたのは、手稲実験の際よりも、3倍超の引張り耐力を用いているからです。」)引張り耐力を増加させることは、引張素材の実験研究によって、大きく改善することが可能と考えています。

図ー1 ミット型鋼製柵

図ー2 階段状 土石流収納ポケット

 

「パイプグリッド」と言う稀代の技術

フォレストベンチ研究会 個人会員 技監 入井徳明

三菱マテリアル、そしてさらにその関連会社を二社ほど勤め上げ、一段落したところで九州工業大学学窓の旧友栗原代表に乞われて、今の職場㈱国土再生研究所に就くこととなった。役職は“技監”、何をすれば良いのかよく分からないまま、よろず相談に乗ってくれれば良いというので引き受けた。初めての仕事は、山梨県大月市の河西邸の真下の斜面で採用が決まった、国土交通省敷地でのフォレストベンチ工法の現場監理で、大島技工の面々とはこの時初めての出会いであった。東京事務所や現場での皆々との会話で耳にしたのは、この工法はコンクリートを使わない、寧ろ排除するのが目的だというその主張に新鮮な感慨を持ったものである。

 

セメント製造・販売をコア事業の一つとする会社に籍を置き、正面からその事業発展に取り組んできた者にとって、セメントを使わない技術を標榜するのは、“これは正気か”と全くの違和感の中で戸惑いを禁じ得なかったことであった。

 

栗原代表は道路公団に籍を置き、高速道路の仕事を40年もやってきた筋金入りだから、“コンクリートアレルギー”の筈はないという先入観があったのだが、どうやら彼は公団の職場を離れる頃にはすっかり宗旨を変えてしまい、エコロジストとして“生命や緑”と共生できないコンクリートは、自然斜面で使うべきでないと、猛烈な主張を展開している。何気なく野外で使っているコンクリートは、人間の都合を通すだけの“役立たず”であり、何れは地球を滅ぼすと確信している様子である。彼の設計手法を基に鋼材を骨組みにして、金網・透水マット・木材をワイヤーやボルト等の引張材で括り付けた、階段状の水平面が随所に姿を現すに至った。人間の都合で変形を呼び又、自然災害で破壊された斜面は、世界各地に点在する棚田の状態にして自然に返すのが、人間がなすべき行動であると断固として主張している。

 

更に又、神奈川県真鶴町での、そして千葉県成田市で施工に携わった「パイプグリッド」工法を見分したとき、反コンクリート一色だと思っていた彼の頭に、コンクリートの弱点を補い同時にその延命策をも視野に置いた画期的工法を企てていたことを知ることになる。

 

パイプグリッドは写真に示すように、パイプフレームを格子状に組み、アンカーの頭部と剛結状態にして地山に縫い付けるので、パイプフレームは地球と直結して不動状態となる。従って、コンクリート擁壁がパイプフレームと地山との間に挟まれると、更なる不動状態が保たれ、ひいては重量だけの表面を抑えるだけの役割だったコンクリートが、引張り力を得たかのように自ら不動の構造体へと変り得るのである。

 

“コンクリート工学”を共に学んだ仲間として、「プレストレスト・コンクリート」の特徴を述べると、コンクリートがPC鋼材の援助を受けると、引張りを発揮する梁として生まれ変わり機能する、そのような妙技を唯のコンクリート擁壁にも蘇らせてくれるのである。老朽化したコンクリートはクラックや風化で粉砕されるが、その時でも透水マットや金網で包まれて散逸を免れ、アンカーの引張り力で(永遠に?)不動が保たれると言われる。

 

今般、太田区田園調布の民家で、50年前に施工された、無筋状態のコンクリート凭れ擁壁の修理の相談に与った。最近の記録的短時間豪雨や巨大地震の脅威に曝された時、施主のご心配は察するに余りあるものであり、この稿に付いては引き続きご報告を継続致したい。

 

 

現場だより(平成30年9・10月)

謎のままにしておけない “土石流”

 

◆地方によって呼び名は様々のようだが、“山津波”という名称は、津波のように「全てを破壊尽くす」ことの代名詞だったように思います。

 

◆学術的にもその定義がはっきりせず、“恐ろしさ”だけが先行して、途方もない災害として位置づけられています。

 

◆その良く分からない災害によって、人々の多くの命や財産が失われる時代を迎えているのが現実です。

 

◆この度、川添祐一郎氏のレポートによって、土石流を鎮める為の具体的提案が紹介されたことは、一歩前進です。

 

◆4年前、札幌での落石実験が一つのヒントとなって、“ミットの形”に変形するパイプフレームを、更に縦横に変形させれば、より大きなエネルギー吸収が出来るのではないか、という発想が生まれました。

 

◆土石流克服は、これから多くの通過点を経て、その対策を見極めながら、正体が明らかにされて行くではないか、と考えます。

 

 

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