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STEP(HTML版)

STEP(第201号)

自然と共生への道
フォレストベンチ研究会 理事 輪王寺住職 日置道隆

人工林はスギ・マツ・ヒノキなどの生産材を得るために、徹底した管理を前提に植栽されます。管理つまり間伐や下草刈りを前提に植栽された人工林は、それがなされなければ維持することはできません。しかし、輸入材が8割を占める現在、値段が高い多くの国産の木材は使用されず、間伐にお金が掛かるため管理されなくなってしまいました。手入れがなされない多くの人工林は荒れ放題、樹木自体が健全に生長できずやせ細り、地盤も脆く、大雨や地震によって表層崩壊の土砂災害を招いてしまいました。

そのほとんどがこの荒れた人工林であることを私たちは知らなければなりません。東日本大震災の大津波によって、約8割の海岸林のマツが流されました。マツは砂浜のような栄養のない土地でも生い茂ることができます。先人達はあの手この手で大変な苦労をしながら海岸林としてマツを植え続けました。

内陸部の農地や宅地を塩害や飛砂から守るために試行錯誤を繰り返し植えたのです。また、マツは油分を含み火力が強いため日常の燃料としても利用され、古くは製鉄や塩を得るための燃料でした。そうして間伐や下草刈りの手入れがなされ、永年存続してきました。私はこの先人達の智慧と努力に敬意を表したい。しかし、当時はこの度の巨大津波を想定して植えられたものではないのです。そして、マツの海岸林は放っておくと枯れ葉や枯れ枝が腐植し土壌の栄養化が進み、そこに広葉樹が侵入します。なぜなら土壌条件が豊かになり整ってくると、被子植物である広葉樹が優勢になってくるからです。植生遷移がおこり、いずれ多くのマツは生存競争に負け、広葉樹主体の森、つまり「極相」に向かって長い年月をかけて変化します。このような現象は全国各地で観察され、松島などでも見られます。

一時新聞紙上で「海岸林としてマツと広葉樹のどちらが最適か?」と騒がれましたが、私はあえて申し上げたい。事実をしっかりと見据え、両方の特徴をしっかりと熟知した上で、その地域によって使い分ければよいと思うのです。マツの海岸林がダメでこれからはすべて広葉樹主体の生態学的知見による「森の防潮堤」にしましょうということではないのです。話はオール・オア・ナッシングではありません。敵対し合うのではなく、双方の特徴を把握した上でともに補完し合う形で植栽すれば良いのです。

輪王寺で施工されたフォレストベンチ工法 植えた木々は生長し、立派な森になりました。

私たちは現代社会に生きています。多くのインフラを造ってきたコンクリートや文明の利器であるコンピューターや自動車、便利な電化製品やスマートホンを否定しては、もはや私たちは生きていくことができません。これは変えようのない厳然たる事実です。ではすべて便利で止めどもなく豊かな、人間だけの欲望によって成り立つ文明を謳歌する方向のみで私たちは未来を生きていくのでしょうか?

植物生態学者であり、森の防潮堤の発案者である宮脇昭先生はよくおっしゃいます。「自然の中では、あらゆる無限の生命がいがみ合い競争しながらも、少し我慢しながら共に生きている」と。私たちは心も身体も便利さに慣れきってしまい、この自然の道理から遠く離れてしまったのでしょう。世界中で起きている問題の根本は、そこに潜んでいると思うのです。それでは文明の利器に慣らされてしまった私たちは、これからどのような社会を目指し模索すべきなのでしょうか。

生態学的知見による森づくりは、そこに一つの方向性を示してくれます。なぜなら、ほとんど失われつつある自然の森に近い森を再生することは、人間ができる唯一の方法だからです。単純ですがそこにヒントがあるのです。今更ながら縄文時代に戻ることのできない私たちは、科学技術と自然との調和ある社会を創造すべきであり、植樹活動はその一環です。だからこそ私たちは時に自然に触れ、本来私たちがもっている自然を愛でる本能を呼び覚ますことが大切なのです。

フォレストベンチ工法は、工学的知見を駆使しながら斜面の安定を図り、自然の道理に従うよう考案された工法です。私たちは今一度、自然との共生という思想に立ち返り、フォレストベンチ工法の普及に努力すべきなのでしょう。

皆で気合いを入れました。開会式にて

本年4月21日(土)岩沼市千年希望の丘、海の見える植樹祭が行われました。25種類のふるさとの苗木15000本を約1800人のボランティアが集い、すべて植えきりました。

多くの心温まるボランティアに感謝します。

植えた苗木は30㎝程度です。これらが成長して20年後には私たちのいのちと 心と財産を守る「森の防潮堤」になります。

 

 

植樹祭に参加してくれた仙台育英高等学校の生徒達

植樹祭に参加した聖和学園高等学校の生徒達  皆満足そうです。

 

自給シニア会のこれまでの活動と今後の課題
自給シニア会 代表 戸村澄夫

Ⅰ.自給シニア会の1年間の活動報告
昨年の6月の総会で承認をいただいて正式に発足した自給シニア会(以下シニア会)は、この1年で2件の実績をあげることができました。具体的には、横浜市泉区の山村邸の駐車場裏のフォレストベンチ工法による工事や関連の正法寺の参道の工事です。

山村邸の裏の駐車場の工事現場

山村邸の駐車場裏の工事は、所有者の山村様がフォレストベンチ工法の優れた技術を高く評価されて発注となったものです。特に、山村様は、斜面に降った雨をベンチ(水平面)で垂直に受け止めて、地中にしみ込んだ水を垂直に張ったネットを通して水だけを排出する方法に感じ入ったといっておられます。さらにベンチに植樹した樹木の根が年月をかけて地盤を固めてゆくことに意を強くしておられます。

山村邸の駐車場裏の工事は、所有者の山村様がフォレストベンチ工法の優れた技術を高く評価されて発注となったものです。特に、山村様は、斜面に降った雨をベンチ(水平面)で垂直に受け止めて、地中にしみ込んだ水を垂直に張ったネットを通して水だけを排出する方法に感じ入ったといっておられます。さらにベンチに植樹した樹木の根が年月をかけて地盤を固めてゆくことに意を強くしておられます。

旧来の工法が、斜面をコンクリートで固めて、長い年月の間には、コンクリートと土との間に雨がしみ込んでコンクリートを剥離してしまうのとは根本的に異なります。

コンクリートが年月を経れば劣化していくのと対照的にベンチ(水平面)に植樹された樹根は、年月を経るにしたがって地盤を強固のものに固めて行きます。

もう一つの工事の実例は、山村邸の駐車場裏の工事のお話を聞いた正法寺の住職が深く感動され、大木の根が道路にはみ出して参道が危険な状況にあったところをぜひフォレストベンチ工法でお願いしたいということで今回の発注となったものです。

大木の根が張り出した正法寺の山道

 

今回の発注の実例は、いずれもフォレストベンチ工法が「自然に帰る」という理念に基づいていることに賛同されものです。

「自給シニア会」の自給とは、水や大気・土壌といった自然の力を活用して森にかえるといった自然と一体となることを意味します。まさにフォレストベンチ工法が従来工法に決別して斜面を森にかえすことであります。社会経験が豊かなシニア会員が、長年培ってきた人脈等を活かして、人の役に立つこの工法を社会一般に広く知らせていこうとするものです。

 

Ⅱ、今後の課題

1、自給シニア会関係者の現在取り組み中の案件は、フォレストベンチ工法研究会理事の河西悦子様の山梨県の岩殿山 山腹の案件や一級建築士の直江様の千葉県市原市の斜面を活用した果樹園の計画案件等が実現に向けて控えております。

これらの具体的な案件を確実に実現していくことが第一と考えます。それには、シニア会の中で情報を共有して、案件の進捗状況を把握し、知恵を出し合って役に立つヒント等を提供していくことができたらよい結果に結びつくものと思います。

2、「ユーザー会」の皆さんとの協働活動

「ユーザー会」の皆さんは、現実にフォレストベンチ工法による工事をご経験された方々です。

この方々の率直なご意見を組織的に吸い上げて活用していかないのはもったいない話です。

自給シニア会としては、貴重なご経験をお持ちのこれらの方々の忌憚のないお話を伺って、よい面は伸ばし、至らない面は改善していく取り組みをしていきたいと考えております。

シニア会もまだ態勢が整っていませんが、できるだけ早い時期にユーザー会の皆さんとの接点を持つようにしたいと思います。

3、活動を持続的なものとするための成功報酬制度と活動資金の財源の確保

・フォレストベンチ工法研究会の会員が、この工法の採用に結びつけた場合には、成功報酬として工事受注額の3%(請負金額1,000万円の場合は、30万円)程度を普及活動資金として受け取ることができます。

・フォレストベンチ工法研究会は、世話局の人件費、交通費、資料代等に充当するため、上記成功報酬額の一部(報酬額の5%程度)を徴収させていただくことになっております。

事業が継続して発展していくためには、財政的な裏付けが必要です。これらの仕組みが有効的に機能して、フォレストベンチ工法が広く社会一般に広まっていくことを願っております。

 

 

 

発想
自給シニア会 会員 公文國士

フォレストベンチ研究会の東京事務所は、東京の中心地域である千代田区神田猿楽町にあります。古本屋街、学生街のある地域として全国的にも有名な神保町に隣接している街です。江戸時代は、武家屋敷街であったという。現在のような街並みになったのは、大正時代以降のようです。歴史的にも古い地域のため、面白いものに出くわすことも多い。事務所の裏手に「豊島屋」という店があることに最近気がついた。一見、ごく普通の酒小売店であるが、これが実に面白い歴史を持っている。

この店は江戸時代、最高位の人気を誇った「豊島屋酒店」という名の“居酒屋”であった(「江戸の居酒屋」伊藤善資 洋泉社)。慶長元年(1594年)鎌倉河岸(現・神田美土代町)で田村十右衛門という人物が職人相手の酒屋を開業した。その商いの仕方は中々ユニークで、客に店先で酒を味見させ、気に入れば金を払ってもらうという方法を採っていた。しかも、下り酒を1合8文という殆ど元値で販売。他のどの店よりも安い。それを豪勢になみなみと注ぐ。呑み助にはたまらない嬉しいサービスである。この手法が人気を呼び、馬方、駕籠かき、日傭取り(ひようとり)という労働者が押しかけ大いに繁盛した。棒手振(ぼてふり:辻売り)もよく来店していたため、豊島屋に行けば野菜、魚などを買うことができたというエピソードまである。つきだしは「馬方田楽」と呼ばれる豆腐の味噌田楽。この時代、市中では豆腐1丁28文であったが、自家製豆腐とはいえ、馬方田楽は2文で提供した。

このように安価で酒、肴を提供できたのは、以下のような理由がある。

客が押しかける豊島屋では、酒樽が次々に空になる。これらの樽を残り香があっても差し支えない、酢屋、醤油屋、味噌屋、漬物屋へと転売したのである。この利益が大きい。何しろリサイクル品であるから、新品を買うよりも遥かに安い。廃棄しなければならないものに値が付くのであるから、一挙両得である。

更に、毎年2月25日に売り出す雛祭り用の白酒である。本業の清酒や醤油の商いを休んだにもかかわらず、白酒だけで1400樽を売り、日に千両の売り上げがあったという。

 

この創業者の特筆すべき点は、こうして得た利益を独り占めせず、酒屋の客に還元したことである。

豊島屋は、現在でも千代田区猿楽町の金華公園脇に移転して酒小売業を営んでいる。白酒、清酒「金婚政宗」を東村山市で醸造しているという。その店が、東京事務所のすぐ近くに現存しているのです。

斜面崩落直後における東野邸の様子

斜面から水平面を生み出す方法としてまず思い起こすのは、棚田や段々畑です。誰がいつどこで思いついたのかは、定かでない。しかし、世界各地で見られることから、発想豊かな知恵者は世界各地に居たということになる。

 

フォレストベンチもこれらの発想と共通したところがあります。ただ1つ違うことは、段にあたる部分に引っ張り力を生み出し、更に高い効率の排水性を加味したことです。崖崩れの多くは、想定外の集中豪雨が原因です。浸水した大量の雨水を効率よく排水しなければ、壁面は損壊します。それを上記の方法で制御する訳です。

今回は、茨城県行方市の事例に触れます。施工主は、東野氏。住居近くの所有敷地にある崖が豪雨により崩壊。土砂が下方の民家を襲い、建物が一部損傷という被害を受けました。

ここの土質は砂状であるため、浸水性が極めて高い。1度崩れた斜面は、この土質のため強固に固定することが困難です。しかしフォレストベンチ工法であれば、このような条件でも問題なく修復が可能です。しかもより堅固な状態に再生することができます。

私たち人類には、自然の暴挙を止める手立てはありません。しかし知恵を駆使して対処する能力は持っています。

整然と修復された斜面の姿

 

 

現場だより(平成30年5・6月)

 

◆テレビで放映される気象図の中に、“梅雨前線”が載る時期となり、九州を代表する西方地域から降雨の便りが報道されるようになりました。

◆昨年の記憶を辿れば、北部九州地域では福岡県北部を中心に“未曾有の豪雨災害”が発生しましたが、その修復が未完のまま、新たな雨期に突入する事態を迎えそうです。

◆気象減容の激しさを表わす表現として、「記録的短時間豪雨」が新たに登場しましたが、これは地表が過去に経験したことの無い強烈な豪雨に見舞われるようになったことを示唆する内容であり、警告と同時に諦めを促すかのようです。

 

◆地球誕生以来、地表が経験したことの無い猛烈な豪雨が、毎年訪れることになれば、如何なる斜面も無事では済まず、安全を保つことは極めて困難なことになりそうです。

 

◆しかも我々は、降雨という恵みと脅威を併せ持つ地球の水循環と共存して暮らして行かねばなりません。我々はこれまで以上に降雨との共存に “可能性を探る努力”を重ねながら、平穏な生活の維持に技と工夫を磨いて行くことが求められます。

(本件に関しては、誌面の都合で続編を用意しており、ご希望のある方には事務局へお問い合わせ戴ければ、喜んでお送りいたします。)

 

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