1. HOME
  2. ブログ
  3. STEP(HTML版)
  4. STEP(第199号)

BLOG

ブログ

STEP(HTML版)

STEP(第199号)

伊方原発を見てフォレストベンチのことを考えました。
フォレストベンチ研究会会長 村沢義久

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。私は、相変わらず太陽光発電(時には風力発電)の普及のために全国を飛び回っております。旅先で防護された崖や斜面を見る度に「ここはフォレストベンチに換えないといけないな」とつぶやいていますが、最近そのことを特に強く感じる場所を見つけました。四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)の周辺です。

細長い半島の付け根にある伊方原発

昨年12月13日、伊方3号機について、広島高裁が運転を禁じる仮処分の決定をしました。そこで、さっそく昨年末現地に行ってみたのです。伊方原発は、愛媛県西部の八幡浜市から西に細長く伸びる佐田岬半島の付け根近くにあり、その先(九州寄り)に5000人程住んでいます。以前から、原発事故の際にはこれらの人々が避難できずに取り残される恐れがあるとの指摘がありましたが、実際に行ってみてそのことがよく分かりました。

 

原発事故が起こった場合、放射能汚染のために、半島に住む人々は四国の内陸部に戻れなくなります。そのため、現在の避難計画では、逆に西に向かって半島西端近くの三崎港まで行き、そこから船で九州に逃れるということになっています。

 

しかし、これは現実的な計画ではありません。この半島を縦貫する国道197号線を始め、大地震の時には崩れそうな崖や斜面が非常に多いのです。これらが崩れたら、住民は取り残されることになり、放射線に晒され続けます。

 

困るのは住人だけではありません。197号線から降りて原発に向かう道路は崖と海に挟まれた狭い道ですが、こういうところが崩れると、原発への救援すらできないことになります。対症療法ではありますが、このような危険な箇所は是非ともフォレストベンチで強化すべきと強く思いました。

 

阿蘇山噴火のリスク

私が太陽光発電を推進する理由は、地球温暖化の防止です。原発は太陽光発電と同様、運転中にはCO2を排出しません。だから、もし「絶対安全な原発」というものがあったらその使用には賛成です。しかし、福島事故で、そういうものは存在しないことが分かりました。

 

私は、長期的には原発は無くすべきという意見ですが、太陽光、風力、水力などの自然エネルギーだけで電力需要を賄えない現状では、当分の間、ある程度の原発は必要と考えています。それでも、最近の再稼働のペースは性急すぎます。現在までに伊方3号機を含む5基が再稼働し、今年春頃までにはさらに4基が加わります。事故から7年にして9基の再稼働は多すぎます。そういう再稼働への急な流れに今回司法がブレーキをかけたのです。

佐田岬半島国道197号線の防護壁 これが崩れたら5,000人の避難路が奪われる(出所:著者撮影)

今回広島高裁が問題視したのは、阿蘇山の大規模噴火による影響です。過去に起きた噴火で、火砕流は160kmまで到達したと考えられています。そのため、阿蘇山から130kmしか離れていない伊方原発に火砕流が到達する可能性は「小さいとは言えず原発の立地には不適切」と判断されました。

 

この判断の影響は極めて大きいはずです。九州電力の玄海原発(佐賀県玄海町)の3、4号機は、今年春頃の再稼働を目指していますが、阿蘇山からの距離は、伊方までとほぼ同じ。火砕流の影響を考えると、海を隔てた伊方より陸続きの玄海の方が深刻でしょう。また、現在稼働中の川内原発(鹿児島県薩摩川内市)も阿蘇山から140km程度。桜島からは40数kmしか離れていません。

伊方原発に通じる道路 ここが崩れたら原発が孤立する(出所:著者撮影)

実は、この佐田岬半島は、原発と並んで大規模な風力発電施設があることでも有名です。実際、伊方原発の背後の山上にも10数基の巨大風車群が並んでいます。この景色を見ていると、「危険な過去の原子力と決別し安全で未来志向の自然エネルギーに移行せよ」という啓示が聞こえてくるようでした。

四国電力伊方原発 左から1~3号機 山上には風車群

最後になりましたが、本年が皆様にとりまして、実り多き年となりますよう祈っております。

 

シニア奮戦記 #1 正法寺の参道
個人会員、自給シニア会員 東京都江東区在住 公文國士

 

フォレストベンチ研究会会員の中には、あるいはまだご存知ない方もいらっしゃるかもしれません。実はこの研究会の中に、「自給シニア会」という内部組織があるのです。シニア会? 何だ、年寄りの集まりか? と、突っ込まれそうですが、その通り。ジジババの集団です。こう暴露すると、陽だまりの中、茶をすすりながら世間話でもする会か? と、更に突っ込まれそうです。ま、そういうこともたまにはありますが、その実態は老兵が集う営業集団でもあります。

 

老兵といいましたが、この団塊の世代、及びそれに近接する世代である今の老人たちは実に元気が良い。何せ戦後の混乱期に生まれ、経済的な困難を持ち前の活力で乗り切ってきた強者たちです。社会の除け者にされてたまるものかと、なかなか鼻息が荒い。老人たちの常套句「まだ若いものには負けん」と吠えながら(実はかなり負けている)、老骨に鞭打って走り回っている。そんな集団です。

 

今回は、この「自給シニア会」が挙げた、実績第1号の事例報告です。功労者は、メンバーの一員で解体業を営む山村達郎氏。工事場所は、横浜市泉区泉町にある正法寺という浄土宗の寺。同じ泉町にある宝心寺の住職が兼務するという通常は住職不在の寺ということでした。ここの本堂再建立に伴う参道整備のため、斜面をフォレストベンチ工法による強化工事を行うことになったわけです。この受注は、住職と懇意にしている山村氏の尽力無しには果しえないことでした。

 

上記の発注を受け、昨年の7月に栗原理事、自給シニア会戸村代表、㈲大島技工社長大島氏らと共に工事前の現地視察に参加をしました。寺は立派な墓石が立ち並ぶ墓地も備えており、普段は住職不在、本堂もこじんまりしているとはいえ中々の寺のようでありました。

 

昨今の様々な気象状況から、周辺住居、また檀家の人達が墓参する際、崖崩れ災害の危険を憂いての工事着手ということでした。この時点では、崖崩れ、参道破損の被害があったわけではないのですが、事前の防御が不可欠という強い意識から決断したものと思われます。

着手前の参道には、手つかずの樹根が威容を誇っていました。間伐材で隠れてしまいましたが、地域の人々の心に強く刻まれていることでしょう。

同日の正法寺視察前に、やはり山村氏が施主である工事現場も見学しました。ここを訪れた近藤だいすけ神奈川県議会議員一行は、かなりの好印象を持たれたようでした。県議会にも積極的に働きかけたいとの強い意欲を示されました。その詳細は、昨年会報に掲載された自給シニア会の戸村代表の報告を参照していただければと思います。

 

正法寺の話に戻ります。本稿発表の時点では、既に参道の崖強化工事は完了しており、間伐材の化粧張りを施した装いは、強靭さを内に秘めながらも優美な姿で参拝者を迎えております。

墓所は、死者の住まいです。しかし遺族、子孫との関わりがある限りは現世との繋がりは保たれると考えます。その2つの世界を結ぶ新たな参道は、死者とのつながりを支える者たちをやさしく包み込んでいます。

 

日本人は、表面上はさりげなく、その裏側には匠の技を秘めるという手法を好みます。木材接合技術の ”ほぞつぎ” 等の技などはその好例の1つです。作家の百田尚樹氏は、著書「戦争と平和」(新潮新書)で日本刀に触れた個所があります。日本刀は、実戦に使用される武器ではありますが、工芸品とも呼べる見事な仕上がりを見せる。切れ味においては世界最高峰の実力を持ちながら、美しさにおいても突出していると評価しています。このように実用品でありながら、工芸品と見紛うばかりの日本製品は数多く見受けられます。

 

フォレストベンチも正しくこの精神によって作り上げられています。表層は間伐材による一見何気ない仕上がりです。しかしその裏側は、引っ張り力と透水力を活用し、強固に斜面を保持する最新の技術が隠されています。これらを実現する㈲大島技工の施工チームの技量はいつもながら見事なものです。またこの作業チームには、中国出身の技術者数名が施工の中心的な役割を担っています。日本文化の感性をよく理解し、それを体現する職人技には感服します。美術・骨董鑑定大御所の決め文句を借用します。

 

「いい仕事をしてますね!」。

 

 

『地盤沈下に伴うワイヤーの取り替え』に関する報告
フォレストベンチ研究会 宮崎支部   川添 祐一郎

 

福岡県宇美町在住の佐藤産業様よりフォレストベンチ工法採用のご下命を受けたのは、平成25年の初めでした。

当初は、敷地回りの地盤を嵩上げして、出来るだけ地盤を平らに均すのが主旨でしたが、敷地の周辺を修正して行く内に、写真のように(写真―1)敷地全体を支えているコンクリートブロック積みに多数のクラックが存在しており、その補強をしないと敷地の嵩上げは覚束ないと判断され、当時開発したばかりのパイプグリッド工法を適用すれば、格好の補強が実現すると、写真のように(写真―2)仕上げました。地盤の嵩上げを行った範囲は、敷地に沿った延長約111mの境界部を最大3mから1mに渡って施工するものでした。全体的に工期は2ヶ月を少し超える程度で同年の4月に終り、その後他の施工事例と同様に何事も無く、安定した状態が続いておりました。

写真1

 

写真2

 

ところが一昨年(平成28年)の6月を過ぎた頃に、敷地南側のアパートに面する高さ2mの間伐材が傾き始めたという知らせが入り、調査したところワイヤーの一部が切れていることが判明し驚きました。凡そ百m四方の敷地を有する佐藤産業としては、嵩上げで土地利用度が向上したことを受けて、大規模な社屋改造を計画され、それまで駐車場としていた区画には立派な管理棟が建ち、その西側にできた5坪余りの土地に車両が往来する通路が設けられていました。その通路造成のために用いた転圧ローラー(約3トン)が傾きの原因では無いか、と考えてワイヤーとアンカーボルトを増やすことによって、反力を強化し、修復を終えました。

 

それから1年強が過ぎた昨年の平成29年8月になって、再び前回の損傷部に隣接する箇所と、そこから最も離れた部分にも地盤沈下が見られる、という報告を受けました。車が乗らない部分にも沈下が見られることから、転圧ローラーも一般車両も原因から除く必要があります。東京本部に相談すると当初埋土の残留沈下が原因であろうとの見解でした。  【図―1】に示すロープの垂れ下がりが起きると、変位が生じた分だけロープには過剰な引張り力が作用します。ワイヤーの専門家によれれば、平均して1割余分の資材が投じられると言われています。綱渡りで芸人がロープに乗ったとき、変形に見合った過剰な引張り力が働くこと、を予期しておくべきだというのです。

そこで修復に当たっては、ワイヤーに替えて曲げに強い鉄筋を用いること、鉄筋の変形を最小にする為に、引張り力を導入できる反力確保にH鋼を埋設すること、更にその前面の地盤に高速道路並の転圧を加えて地盤流動が起きないようにして鉄筋を保護すること、雨水排水のために多量の有孔管埋設を佐藤産業様へ提案し、採用されました。

高速道路の舗装厚は路盤を入れて1m程度ですが、その厚さで交通荷重を支え側方流動に耐えているのですから、砕石を敷き詰める時にローラーに代わってランマ―で丹念に仕上げれば、高速道路と同じ効果が得られる、というのが経験から来る知見だと言います。

 

コンクリートブロック摘みの背後に存在する当初からの古い埋め土の残留沈下は、これからも継続するでしょうが、それを局部沈下でなく地表と並行に分布させることが出来れば、鉄筋の引張り力は保護されるという判断である。鉄筋の錆による劣化は、10年で厚さ0.1mmと言われます。D19mmの鉄筋が何処まで健全で居てくれるか、私の余命を以っても足りない分は、次世代に確かめて貰いたく、互いに長命を競いたいと思っています。

 

最後に、今回も損傷修復工事に当たったのは、当初の施工から2度の派遣工事を請けてくれた大島技工の皆さんでした。年末の福岡の凍てつく寒空の下(関東地方より厳しい日々が続いていた)、孤軍奮闘してもらった大島技工には、心から感謝しています。

現場だより
(引張り材の盲点)

 

◆ワイヤー・ロープのような引張材が、その軸方向のみに働く引張り力を受け持つ場合(吊り橋やエレベーター等)でなく、軸方向と直角でしかも重力が長く継続的に働く場合には、その機能に大きく変化が生じることが知られています。

 

◆綱渡りに例えれば、ロープに芸人の重さが作用して垂れ下がると、ロープが垂下した分の引張り力が、一般に1割増しとなることが知られています。

 

◆フォレストベンチ工法で用いるワイヤーは、アンカーと受圧板との間に直線的に張った後に土砂が埋戻される仕組みなので、これまでこの垂下現象を心配することはありませんでした。

 

◆しかし今回報告されたように、残留沈下を残したままの盛土地盤の内部でワイヤーが用いられると、長い時間の継続でワイヤーに切断が起きることが判明しました。

 

◆幸い、アンカーとして用いているASボルト(鉄筋)であれば、曲げやせん断耐力が十分で、砕石を丹念に転圧すれば残留沈下地盤を吸収して、引張材を保護してくれます。

 

◆これはワイヤー独特の、たわみ・変位・弾力性等の利点が裏目に働いた結果です。圧縮力には座屈という曲げ破壊の盲点があり、引張り力にも類似する垂下現象があるのです。

 

全てのものには、強さと弱さの両面が存在することに基づいて、適材適所で用いるべきという教訓です。

 

 

 

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


関連記事