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STEP(第198号)

大沢崩れ終息への期待
個人会員 書籍編集者 小鮒由紀子

栗原理事から富士山の大沢崩れの問題についてお聞きしたのは、今年のフォレストベンチ総会直後のことでした。『信仰の対象と芸術の源泉』として世界文化遺産に登録された富士山--その霊峰・富士が急激に姿を変えようとしていることを、恥ずかしながら、それまで私は知りませんでした。

大沢崩れは、富士山西側の源頭域がその地質の特性により崩れ続けている現象で、落差600m水平幅約100mの6haにもわたって1日平均275トンの落石があり、富士山の西側面の欠損が進んでいます。なんと200年後には、裾野から山頂部へ向けて大きく開いた“扇型”に抉れるというのです。

これを防ぐべく国土交通省は、大沢崩れの“傷口”を裾野から盛土によって埋め戻すという対策を立てています。しかし、この計画は、エジプトギザのピラミッドを20段も重ねる内容に等しい無謀なものであり、また、寸時も休むことなく続く落石のため、未だ本格的修復に取り掛かれないで苦慮しているそうです。

栗原理事は、傷口の手当てよりも、ズバリ「源頭部からの落石を止める」ことが先決であると語られました。そして具体的な検証のうえに確立された“方策”をまとめた文書も見せてくださいましたので、以下に要約して紹介します。

 

落石を止めるには、「透水性鋼製壁」(写真1&2)を使う。落差600mの源頭部を30mピッチに分割して透水性鋼製壁を直立させ、剥がれ出す巨石群を受け止める。

写真1&2 : 通水性鋼製壁。3年前の実験で80トンの落石を水平幅 9m の擁壁で受け止めることに 成功した。 これから換算すると、大沢崩れの 落石密度は、この実験の1/3程度となる

落石が続く中、透水鋼製壁の直立を図るのに先立ち、剣が峰頂上に“アンカー”を打設して引張り力を確保し、「鋼製の縄梯子」で崩落の起きている源頭部全体を投網のように覆う(図1参照)。大沢崩れからの落石群を魚に例えるなら、剣が峰からの投網によって、落石を漁網ならぬ縄梯子で掬い取るのである。

図1 : 万能リングと鋼棒にて縄梯子式 ネットワークにした姿

鋼製の縄梯子は、鋼棒を万能リングと呼ぶ円形連結具で縦横に10mピッチで結んで組み上げる(写真3&4)。これは鋼製ながら縦横に伸び縮みする構造であり、起伏の激しい山襞に対しても、弾力性とたわみ・変形で適応可能。落石の衝撃をネットワーク全体の弾力性で受け止める。

写真3&4 : 鋼棒を万能リングに連結した もの。 10m四方(100㎡)当たりの鋼棒の 引張り限度は30トン。重量は140㎏

つまり、源頭部を「鋼製の縄梯子」で覆ってなお、その隙間から零れ出した魚を「透水性鋼製壁」で遮断して落石を静止するのである。

もしこの方法で落石を捕らえることができれば、斜面の欠損を招いた落石は転じて堆積する岩石量となり、そのまま斜面の抑え盛土として有効に使える。さらに、落石を阻止して現場が安全な斜面になれば、速やかに人力や機械力の導入が出来、高度な土木技術の投入を投入して傷口の修復が可能になる。

 

“フォレストベンチの栗原理事”のことですから、コスト面も考え抜かれています。

竹取物語の舞台は、駿河の国大綱の里(現在の富士市)。物語の最後、かぐや姫の帰っていった天(月の都)に最も近い場所として富士山が登場します。2005年、宇宙飛行士の野口聡一さんは初飛行を終え、「宇宙からは富士山が日本のランドマークだった」と語っています。そう聞いた時、かぐや姫を連れ戻しにきた天からの使いもまた、富士山をランドマークに降りてきたのではないかと思ったものです。

富士山の古(いにしえ)からの美しい姿がたった200年で崩れようとしている……防ぐ手だてがあるのです! 栗原理事がライフワークとして取り組んでこられたという渾身の提案が受け入れられることを願ってやみません。

酔いどれの白日夢
個人会員 公文國士

 

街中を何気なく歩いていた時、ふと気付いたことがある。動物病院が増えた。聞けば、世界的なペットブームだそうだ。ペットの代表格である犬、猫の飼育数も増え続けているという。飼育数の第一位は犬と発表されているが、猫もその飼育数に迫る勢いだそうだ。

犬は、元はオオカミであるといわれ続けてきた。しかし、どのようにして犬となったのかは、判然としないところがある。人と供に生活するようになって1万5千年も経つといわれているのに、少し意外な気もする。

このイヌ化の謎を解明するかもしれない研究成果の記事が紹介された(アメリカンサイエンス、2017年5月号)。それは、ロシアの遺伝学者であるリュドミラ・トルート教授によるキツネ(ギンギツネ)を使った「イヌ化」への過程を探る実験である。人間に対して警戒心を持たないキツネのみを選別、交配を繰り返した。幾世代も経るうちに、姿かたちはキツネそのものであるが、振る舞いはまるで犬のようなキツネがかなりの確率で発生した。

遺伝子解析をしてみると、従来のキツネと比べて何の変異も認められなかった。この変化は、遺伝子の突然変異によるものではなく、ある遺伝子の働きの順序、働きのタイミングの違いによって起こる現象であることが分かった。

人懐こいということは、警戒心がない、即ち好奇心が強いという幼児期特有の性質である。ペット化、家畜化とは、「子供の特質」を長く維持することであるという。驚くことに、この特性は次世代にもそっくり継承されるということだ。

この記事に触発された。無類の犬好きにもかかわらず、東京ではマンション暮らしの為、犬を飼うことはできなかった。犬を飼おう。しかし都会では犬が気の毒だ。犬を飼うならやはり田舎だ。田舎なら、犬だけでなく猫も飼える。

そろそろ老境に差し掛かってきたため、生活の基盤を国元に移すことも考え始めていた。幸い実家も無人状態とはいえ残っているので、少し手を入れれば老人の2人ぐらいは住めそうだ。ところが、実に勝手気ままな話だが、できれば住まうのは子供時代を過ごした母の実家の近辺を望んでいる。海岸線に沿った国道に面した丘の上の台地である。伯父の家の居間からは太平洋が一望でき、沖合には濃紺の黒潮の帯が見える。また国道から丘の上に上る坂道が2本あり、1本は徒歩でしか上り下りができない狭い急な坂道、もう1本は軽トラックならぎりぎり通行可能な地域の生活用道路だった。この坂道を上る途中で見る海の光景も大いに気に入っていた。今では、田舎も車社会になってしまったために、この生活道も使われなくなり、草木が繁るに任せた状態である。そこで、こんな妄想をしてみた。これら2本の坂道の復活である。徒歩専用であった急な坂道は、さすがに階段状にするなり傾斜を緩くする必要がある。元の坂道は上るとき、鼻が地面につきそうなぐらい急であった。かつての老人たちは、こんな急坂でも苦も無く上り下りしていたが、今どきの老人は、私も含めて無理だ。もう1本の広めの道は散策道としても使えるようにする。工法はフォレストベンチを採用する。それには次のような大きな理由がある。極めて近い将来、必ず起こるであろう南海大地震である。市役所では、発生する津波の高さを7mと想定しているようだが、とてもそんな程度では済みそうもない気がする。東日本大震災規模、或いはそれ以上の規模の地震が発生した場合、津波が丘を駆け上るかもしれない。また海岸べりには漁師の住居が密集している。この人たちの避難場所も確保しなければならない。そのためにはこの2本の坂道は必要不可欠となる。しかも堅固でなければならない。現在考え得る限りでは、フォレストベンチ工法しかない。ほろ酔いでまどろみながらこんな光景を夢見ていた。

 

和歌山県の施工現場における施工2年後の経過報告(2)
法人会員 中林建設株式会社 工事部工事課長 永山裕元

平成27年度 和歌山県内において、大規模な全天候フォレストベンチ工法による斜面補強工事を3箇所で実施。前号では、和歌山岬道路大谷南地区北改良工事について紹介したが、今号では残りの2箇所について、現状の経過について観察した結果を基に考察を述べる。

2. 紀北西道路 根来地区改良工事・根来地区南改良工事

紀北西道路は、京都府・奈良県・和歌山県を結ぶ京奈和自動車道のうち、紀の川市から和歌山市を結ぶ延長12.2kmの高規格道路の名称で、当工法が採用される根来地区は、その中間地点となる岩出市の山間部に位置する。この根来地区は、約900年もの歴史をもつ根来寺に代表されるように非常に歴史ある土地柄で、新規の道路計画においては景観に配慮した道路計画が地元の方々から強く要望されていたとして、景観に優しい当工法が採用されるに至った。

 

(工事概要) 発注者 :国土交通省近畿地方整備局 和歌山河川国道事務所

A,根来地区改良工事

施工延長:151m、施工面積:827㎡、仕上り勾配:1:1.2

施工段数:7段、法面高さ:18m、既設アンカー接続

B,根来地区南改良工事

施工延長:76m、施工面積:681㎡、仕上り勾配:1:1.2

施工段数:8段、法面高さ:20m、逆巻き施工

(施工前)

Aの根来地区改良工事では事前に植生マットと受圧板により切土工事が行われていたが、自然回復の効果が乏しいため当工法による追加対策が施されたものである。既存のロックボルトを活用してフォレストベンチを組立てる従来にはない手法を採用した。

Bの根来地区南改良工事では、軟岩で構成される地山を逆巻き工法で施工した。

隣接する二つの山は礫質土や軟岩で構成され、緑化にはあまり適さない地層であった。

左:写真2-1 施工前全景(根来) 右:写真2-2 施工前全景(根来南)

地元産の紀州材を活用した間伐材は、森林回復を目的とする発注者の意向により、防腐処理は施さず表皮を剥いだ自然木とした。フォレストベンチの施工完了後、別途発注により現地の植生に合わせた苗木の植樹が施された。また埋戻しには本来は掘削した土砂を流用するが、植生に適さない礫質土又は軟岩であったため、表層の50㎝は他工区から運搬した普通土を使用した。

左:写真2-3 施工完了近景(根来) 右:写真2-4 施工完了近景(根来南)

施工後から2年半が経過。斜面直下の高速道路が開通したため近づくことは出来ないが、従来のコンクリートと比べ自然に近い景観に仕上がっている。また徐々にではあるが植樹した樹木が生長していることが分かる。順調に森の再生が進めば、岩盤緑化に対する当工法の適用性が証明され、更なる需要を見込むことも期待され、今後の緑の回復が期待されるところである。

 

写真2-5 現在の状況(根来)※根来南側は撮影が困難

 

現場だより(平成29年11・12月)

 

◆         近年の記録的短時間豪雨は、滝の様な雨量がピンポイントで、まるで滑り台のように斜面表土を剥ぎ取り、緑を奪って醜い姿を残して行きます。

 

◆         従来工法でそれを修復した跡を見ると、更に酷いケロイド状を成し、目をそむけたくなります。

 

◆         7月の九州北部豪雨では、十数万㎥という人口林が流木となって、河川を氾濫させ橋や人家を襲いましたが、斜面にも無数の創傷が残りました。

 

◆         更に熾烈に成って行くこのような豪雨から国土の7割を占める森林を守るには、新たな方策が必要となりましたが、その第一は斜面表土を如何に保全するかに掛かっています。

 

◆         引張力が皆無状態の表土をこれまで安定させてきたのは樹根の引張り力です。表土流出さえ阻止できたら、森の新しい生命は数年で蘇生することを想い起こすことです。

 

◆         間伐材など木材の耐久性は僅か10年ですが、樹林の生命はその間に十分蘇えります。鋼材の長期引張力の下で、間伐材等の寿命を組み合わせながら表土保全を図れば、数年の内に森が再生することを実践すれば、豪雨克服は可能と確信します。

 

 

 

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