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STEP(第193号)

太陽光発電をやって日本の景観について考えてみた
フォレストベンチ研究会 会長 村沢義久

 

遅くなりましたが、新年おめでとうございます。今日は、私の本業である太陽光発電と景観のお話をします。2016年3月、軽井沢に住む友人から連絡がありました。「太陽光発電施設が乱立して問題となっています」。気になるので、10月になって視察してきました。

 

発地・馬取メガソーラー

問題になっているのは、発地・馬取(ほっち・まとり)地区(軽井沢町の南東地区)の敷地3万坪(10万m2=10ha)に計画された約6,000kW(6MW)のメガソーラーです。

 

施主は2014年9月17日、馬取公民館で太陽光発電事業の住民説明会を行い、「CO2の発生削減に貢献できる環境に良い事業」と強調しましたが、一部の参加者からは「樹木を伐採してまでやるのは矛盾している」などの反対意見があがりました。

 

逆に賛成の意見も出されました。結局、賛否両論ある中で、このプロジェクトは、軽井沢自然保護審議会及び町長の承認を得て開始され、すでに一部は完成しています。私が実際に見た感じでは別に違和感はありませんが、一部でまだ不満の声があるようです。

筆者自身は、太陽光発電推進者ですが、反対意見にも耳を傾けています。実際、各地で多少の問題が生じていることは事実です。そのため、自治体の中には独自ルールを定めた所もあります。

 

大分県由布市では2014年1月28日に「メガソーラー抑制条例」案が可決されています。由布市は由布院温泉で有名ですが、周辺の景色も大変美しいところです。相次ぐメガソーラーの建設計画に対して、景観が損なわれるとして住民の反対運動が起きたからです。京都市でも、ソーラーパネルの色などに規制を設けています。

 

樹木を切ってまでやる価値あり!

住民運動における反対の理由は主として二つ。(1)樹木を切るので環境に悪い、(2)景観を損ねる、というところです。

 

まず、樹木を切ることについては、言うまでもなく良いことではありません。しかし、切った跡に太陽光発電を設置すれば、CO2削減によるメリットの方がはるかに大きいのです。

 

太陽光発電が増えた分だけ火力発電を減らすことができます。発電量1kWh当たりのCO2の削減量は0.5kg。だから、発地・馬取の6MWなら(年間発電量720万kWhとして)3600トンに上ります。

 

「森林によるCO2吸収がなくなってしまうではないか」との反論があるかも知れませんが、実は、その吸収量は非常に小さいものです。まず、植物の光合成の効率は非常に低く、1%を超えるものはほとんどありません。対する太陽光発電は15~20%だから数十倍の効率です。

 

しかも、植物が正味でCO2を吸収するのは、成長している間だけ。成長が止まってしまうと、光合成による吸収と呼吸による排出がほぼイコールになってしまいます。

 

二番目の景観の問題はもっとデリケートです。軽井沢でも、「広大な緑を失うことは軽井沢の損失」として多くの反対署名が提出されています。その一方、「太陽光パネルは美しい」という声も少なくないのです。

 

日本の景観を悪くしているもの

太陽光発電が美しいかどうかは、主観的なものですが、本当に日本の景観を悪くしているものがいくつかあります。下の写真をみて下さい。4棟並ぶソーラーハウスは景観を悪くしてません。悪くしているもの–その1は、道路脇の電柱と電線です。

日本の景観を悪くしているもの–その2は皆さんの仕事に関係するもの。斜面・法面のコンクリート・モルタルによる補修跡です。きれいな緑の斜面にできた「かさぶた」のような傷跡。こういう工法は土中の水圧に弱く、脆弱であるのみならず、美しい日本の山野を残念な風景に変えています。

こういう問題に対する回答の一つがフォレストベンチ工法ですね。壁面材とアンカーを繋ぐワイヤーが、土中の水圧や地震力を弾力性と透水性で逃がし、さらに樹根の生長による引張力も活用する。それだけでなく。植樹と間伐材の利用により、自然に溶け込む優しい景観が実現します。

 

私は、太陽光発電を通じて、景観の重要性を再認識しました。今年は、フォレストベンチ工法が飛躍する年になることを祈っております。

 

杉の壁に感謝
牡蠣の森を慕う会 代表 畠山重篤(フォレストベンチ研究会 理事)

 

栗原光二氏が我が家を訪れたのは平成12年の初春であった。初孫が生まれた年で、その子がもう高校二年生である。 差し出された名刺は、「全国高速道路建設協議会 事務局長」という厳めしい肩書きである。生物を相手に暮らしていると、土木の専門家とはもっともらしい説明をしながら結局は自然破壊をする人と思えて仕方がなかった。用向きによっては早々にお引きとりを願おうと思っていた。

 

だが、フォレストベンチ工法(当時グリーンベンチ工法)の説明を聞いていて、“法面が森になる”ことに気付かされ、はっとしたのである。 三陸 リアス式海岸の当地方は、道路を通そうとすると法面が続出する。傾斜が急なので、コンクリートの吹きつけとなる。 降った雨は浸透することなく側溝から直接川に流れ海に注ぐ。  森林の腐植土層を通った水の中に、牡蠣の餌となる植物プランクトンを育む養分が含まれていることを知り、漁民による植林活動を続けている身にとってコンクリートの法面問題は頭の痛いことであった。

全国の法面が森になったら、自然界への効果は計り知れない。    特に沿岸域の海の環境にとって直接的に有効である。長年、森と海との関わりを追い求めているとフォレストベンチ工法の絶大さがよくわかる。自分なりに頭の中で整理し話をしてみた。

 

すると栗原氏は「やっぱり海まで効果がありましたか。 海から遠い森が海の生物まで関与しているなんて、今まで考えたことはありません。建設省(当時)にもそんな発想をする人はいませんでした。土木屋はもっとそのことに気がつくべきでした」、と仰られたのである。

 

「ところで近くに崖はありませんかね」と急に土木の専門家の顔にもどった。実は我家は海辺の山の中腹に建っている。 祖父が自分の保有している土地の中で最も景色のいい土地に建てた別荘なのである。家の裏と前は崖である。雨が降っては崩れ、春先は凍った土が溶けては崩れる。その度に土を運び出さねばならない。なんとも始末に負えない代物であった。

ところが栗原氏はニコニコしながら「いい崖ですね。 グリーンベンチ工法にピッタリですね」と言ったのである。 そして 「ここを我々グリーンベンチ研究会の試験施工地に貸していただけませんか」と・・・・・・・・。

 

五月、実働部隊がやってきた。  山形市に本社のある共和防災建設の面々である。崩落した崖地の修復を専門とする国内でも指折りの技術力を有する会社だという。社長の鈴木敏幸さんは、栗原氏の理念に共鳴し、グリーンベンチ研究会に入会した。そして今回、その技術力を提供しながら社員に工法を会得させるために現場を担当することになった。

 

作業を見学している内にその原理が素人の私にもわかってきた。法面を段々畑のように下から上に工事していく。  山側に水平に近い角度で固定ボルトを打ち込むための細い穴を開ける。固定ボルトを差し込んだらモルタルを注入して固定する。次に水平面に垂直に土を受け止める壁を立てる。壁の材料に杉の間伐材を有効利用すれば、未間伐の杉山が甦り、林業問題の解決に寄与することになる。

 

土留めの間伐材を固定するコンクリート製の柱が等間隔に立てられ、固定ボルトを連結する。柱の外側に3メートル長の間伐材が8本取り付けられた。  土留めの壁が立ったところで斜面の表土を上から削り落す。こうして一段目の水平面が姿を表したのである。同じ要領で崖全体の段々が出来上がった。翌年、海辺側の崖にもこの工法が施工された。

試験施工した7年後に畠山邸の母屋の裏山のフォレストベンチを点検する鈴木理事。

そして、平成14年秋、30年ぶりという大雨、同15年5月、震度6の大地震、そして同23年東日本大震災という天変地異に見舞われた。ところがビクともしなかったのである。だが壁の杉だけは年老いて朽ちてきた。感謝を込めて交換したいと思っている。

今から6年前の東日本大震災の翌月の4月8日に共和防災建築㈱の鈴木社長の運転で畠山邸を訪問し、巨大津波に動じなかった快挙に思わず握手をした栗山理事(右)と畠山理事(左)

上野2枚の写真は現在の様子、試験施工から17年経過している。左の写真と比べると針金は今もしっかりと保たれているが、残念ながら杉の丸太の劣化が目立ちます。

 

自然と技術の調和を目指せ
曹洞宗 金剛寶山 輪王寺 住職 日置道隆(フォレストベンチ研究会 理事)

 

今年の輪王寺のテーマは、「和して同ぜず」としました。誰とでも調和しますが、道理や信念を忘れてまで他に合わせるようなことは決してしないということです。この言葉は、自然と技術の調和についても同様に考えられると思います。

 

文明は、豊かな森と川があって成り立ちます。土地本来の森は、無限の生物の宝庫であり、絶えず生命の生滅を繰り返しながら循環して有機物を生産し、豊かな土壌をつくります。そして豊かな土壌は天然のダムとして水を保有します。この働きの恩恵なくして持続的に文明は成り立たちません。森があるからこそ、豊かな水が供給され、土壌の生産量が保証されて農耕が安定します。森の栄養分は海へたどり着き、植物プランクトンを発生させ、漁獲高をも安定し、そしてそこに住む住民は安心して生活を送ることができるのです。森の破壊は文明を危機へと導きます。文明が危機に陥るときには、必ず水と食料をめぐって争いが起きます。

 

すべての戦争は、元をたどれば資源の奪い合いであり縄張り争いなのです。私たちが今何気なく使っている資源のほとんどは生物起源であり、石油も石炭も、2~3億年前のシダ植物の森や微生物が何らかの地殻変動で地下に潜り、永年掛けて地下の圧力と熱によってできたものです。私たちは衣食住すべてを自然の恵みから頂戴しなければ生きていけないという冷厳な事実を認識しなければなりません。その基底にあるのが無限の生命の塊である土地本来の森なのです。森を守ること、生態学的理論に裏付けられたその土地本来の森を再生することは、私たちのいのちと心を守り、未来に資源と希望をつなげることであり、持続可能社会にとって欠かせません。また、戦争を起こさないためのひとつの手段であることもあえて付け加えたいのです。なぜなら、森そのものが人間の立場から観れば未来に残る資源なのですから。そして、自然に近い森を再生することは、自然と人間を結びつけ調和させる唯一の実践です。

 

人類は、所詮平和を祈りながらも環境問題や戦争を起こしてしまう矛盾した存在なのでしょう。釈迦は2500年前、世を俯瞰してみて人間の本質に気づき教えを説きました。曹洞宗の開祖道元禅師は世間の矛盾に気づき、山奥で自然に溶け込むが如く修行し、権力と結びつくことを避けました。生態学的にみると、人間は自然の中の単なる寄生虫的立場でしか生きていくことができません。しかしこの頭でっかちな寄生虫が増えすぎて、悪さして地球環境問題やら戦争を引き起こしているのです。

 

私は禅僧のはしくれであり、フォレストベンチ研究会のメンバーを務めさせて戴いています。険しい山々に覆われた日本の地勢を鑑みるに、フォレストベンチ工法は、斜面に段々畑のような水平面をつくり、水捌けを良くすることに貢献します。そして雨によって表土が流出することを防ぎます。山は常に呼吸しています。その呼吸を止めてしまうことは、自然の道理に反することですが、この工法は循環を考慮して自然の道理に適ったものです。私は、フォレストベンチ工法で安定した斜面に、土地本来の森づくりを施すことが、自然と技術の調和の実行であり、未来に生命と希望をつなげることと考えています。そして、これこそが「和して同ぜず」の思想の実践なのでしょう。

本年もよろしくお願い申し上げます。

昨年11月11日(金)に明治記念館において第 36回 の都市賞表式が開され、「輪王寺の森づくり」 が 都市化機構会長賞 のの事業活動部門で受賞され ました。 受賞理由は「かって樹高20mを超える杉並木で あった参道が、敷地の下を通り抜ける県道トンネル工事 のため殆どが伐採された。そこで、生命力あれる森づくり をコンセプト に参道の復旧に取り組んでおり、その経験 を震災復興 の森づくりに生かし取組んでいる」というものでした。 おめでとうございます。 (編集部調べ)

上の写真は、公団法人都市緑化機構 理事長の輿水肇(こしみずはじめ)氏から表を受ける筆者

 

現場だより(平成29年1月)

 

◆年が明けまして、早々と受注の話が入って参りました。三つ目に飛び込んで来たのは、神奈川県川崎市高津区の住宅街で、崩れかかった高さ10m程の崖を修復強化する物件です。◆連絡は、昨年、真鶴町の大久保邸裏山の施工事例を見学戴いたコンサルタントの地盤品質判定士の方からのメールでした。採用が決まるまでには、他の複数の工法との比較という手続きが必要で、今後の情勢次第です。

 

◆現地見学を二度も経験されただけあって、フォレストベンチ工法の知識は豊富で、既に測量を終えて横断面が出来ており、階段状の形状はこれでどうか、という問い合わせでした。このように周到な問い合わせは初めてで、大いに驚きました。

 

◆しかしもっと驚いたのは、計画図の署名欄に「○○市 建設緑政局 みどり保全整備課」と記されていたことです。

 

◆本来なら「土木局或いは建設局」だった筈の部署ですが、近年の情勢から「緑政局」に改められたのだと思います。咄嗟に「グリーンインフラ」の影響で、脱コンクリートのり面が増える兆候では無いかと、身が震えました。

 

◆人の目線より上部空間を占める切土のり面が、一面緑で覆われれば、人々の気持ちは大いに和らぐのでは無いかと、今年の運勢を感じた一瞬でした。

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