1. HOME
  2. ブログ
  3. STEP(HTML版)
  4. STEP(第192号)

BLOG

ブログ

STEP(HTML版)

STEP(第192号)

伊豆半島にコンクリートの防潮堤は似合わない!
- 伊豆に観光と両立する津波対策・地震対策を -

フォレストベンチ研究会 理事 河西悦子

城山公園から下田湾を望む

私の生まれ育ったところは伊豆の下田です。

家から5・6分も歩けば海が見えてきます。小・中・高校の頃は、友達とおしゃべりするときは、海岸に繋がる城山公園、その麓をぐるりと囲んでいる海に面した循環道路を散策しながら、というのが定番でした。海を眺め、その風光を五感で受け止め生活することをあたり前のこととして暮らしてきました。

子供のころから、ちょっとした地震などあるたびに、「大きな地震がきたらすぐ近くの高台にあるお寺に逃げろ」と言われて育ちました。関東大震災の時には祖母や母達もそのお寺に一週間位避難していたそうです。そしてよく、安政の地震・大津波では旧下田町は7軒しか家が残らなかったという話も聞かされていました。

 

大地震が頻発した幕末期、津波で荒廃した下田でしたが、その後長崎を凌ぐ外交の最前線になり、伊豆半島の中心地として復興しました。

 

今、伊豆半島に防潮堤の話がもちあがっています。南伊豆町では住民説明会が既に3回開かれたと聞きました。

 

2015年6月に静岡県は国が公表した相模トラフ巨大地震の被害想定をもとに、新たな津波高と震度の想定結果を発表。必要堤防高は南伊豆町の16m、松崎町14m、下田の13.5m。県はレベル1(M8.2の発生頻度が比較的高い地震)の地震には原則として防潮堤などの施設で防ぐ方針、必要堤防高を前提に地元側と整備に向けた協議を進める、と発表しています。

伊豆半島南部の地域海岸と必要な堤防の高さ(単位:m)

昨年はあまり伊豆に行けなかったため、それらの情報に疎かったのですが、今年になってから、防潮堤が地元で検討されているという話を聞き、愕然としました。

 

東北での防潮堤の話は、フォレストベンチ研究会で、コンクリートから緑の防潮堤へという話を聞いていましたし、今年の総会での「東日本大震災からの教訓―防潮堤を勉強する会(気仙沼市)がたどった経過―」と題しての三浦さんの生の声を聴くことができました。「宮城県で進められている防潮堤事業は、決して実例として東北から出して欲しくないと願っている。」という言葉は今でも耳に残っています。

宮城県の防潮堤(三浦友幸さん提供)

北海道南西沖地震から20年になる巨大な11mのコンクリートの防潮堤に取り囲まれた奥尻を取材したハフィントンポストの長野さんのブログに地元漁師の方の「東北の方は奥尻から学んでほしい、コンクリートの景色の奥尻には昔のように奥尻の自然を愛してくれた観光客も来なくなった。巨大な防潮堤の影響か、牡蠣の養殖も昔のようにできない。若者は島を離れ、島の経済は悲惨なことになっている。」

 

伊豆は奥尻・宮城の先例をしっかり学ぶことができます。まず防潮堤ありきではなく、地域の人々・関係者が自ら学び選択していく勇気を持ち、伊豆ならではの防災・減災の手法を確立して欲しいと思います。

 

観光・漁業が主力産業の下田・伊豆地方は防災と景観・自然の豊かさをどう両立させられるか。本当に命を守り暮らしを守るにはどうすればよいか?フォレストベンチ工法考案者である栗原さん発案の具体的提案として絶景と味覚を楽しみながら防災訓練効果を高める取り組みのパンフができました。防災を観光の目玉に、防災訓練・避難訓練を観光客巻き込んで、日常の観光の中に生かすことを地元の人達と検討していきたいと思います。

「絶景と味覚を楽しみながら防災効果を高める取り組み」の資料より(栗原理事提供)

 

 

現場見学会を開催しました!(和歌山~滋賀~京都)
フォレストベンチ研究会 事務局長 大台哲夫

 

会員のみなさま、いつもフォレストベンチ研究会の活動にご理解・ご協力いただき、誠にありがとうございます。6月の総会で、会報の発行を奇数月のみとすることで、みなさまからいただいた会費をより有効に活用するためにどうすべきか。いくつか考えましたが、やはり今年度は現場見学会を開催することにしました。

毎年東京で総会を開催していますが、なかなか総会で活動報告などを聞くことができない西日本の方にも、直接フォレストベンチの現場を見ていただく機会を設けるため、今回は近畿での現場見学会としました。

 

11月8日見学会当日、ずっと前からこの日だけは晴れてほしい!という私の願いも空しく、当日は午前中から雨。しかも遠くが見えなくなるくらいの本降りでした。写真を撮ることもままならず、事前視察に行った時の写真も交えながら、3つの現場をご紹介します。

 

まず初めは和歌山県岩出市にある現場です。この現場は、京都・奈良・和歌山を結ぶ京奈和(けいなわ)自動車道のほぼ西端に位置する「紀北西道路」の中間点となる岩出市にあります。近くには開山約900年の伝統を誇る根来寺を中心に、四季折々の自然の風景を楽しむことができる場所です。

 

もともと景観に配慮した道路計画が地元の方々から要望されていたため、全天候フォレストベンチ工法により斜面を森に再生する方法が採用されました。

現場は今年の2月に完成し、下を走る道路も供用が始まっているため、近づいて見学することはできませんでしたが、岩出市役所の職員の方のご協力を得て、岩出市の施設の駐車場から見学しました。実際に施工に携わった中林建設㈱の永山工事長、工法採用に尽力していただいた同社の山本支店長にもご出席いただき、当時の詳しい施工状況や、工法採用に至った営業活動の様子などを説明していただきました。現在はまだ植樹は行われておらず、また暫定斜面であることから、将来的な道路拡幅時の斜面に当工法が採用されれば、非常に大きな規模の実績となりそうです。

 

次に見ていただいた現場は、滋賀県大津市にある大津放水路の開削水路区間に施工されたフォレストベンチです。大津市内には8つの川が流れています。どれも川の断面積が小さく、大雨が降るとすぐに川から水があふれてしまうため、8つの川からあふれる水をそのまま瀬田川に流すために作られたのが大津放水路です。大津放水路から瀬田川への放流部から約250mは、開削水路となっており、その両側の斜面に全天候フォレストベンチ工法が採用されています。

写真①事前視察時に撮影。左が「根来地区」約827㎡ 右奥が「根来地区南」約681㎡

②2005年3月撮影 竣工後まもなくの状況です。

③事前視察時のもの。竣工後11年が経過し立派な森です。

2005年に竣工した現場は、今年で11年を経過し、完全に森が再生されていました。上の写真は南向きの斜面なので特に日当たりが良く、樹木の生育状況も良さそうです。一方、北向きの斜面では、ところどころ間伐材の落下している箇所が見受けられましたが、樹木はしっかりと育っていました。

 

当初の予定では2現場だけの見学会でしたが、少し時間があったので、2014年春に施工した京都動物園のフォレストベンチも見てきました。近くには平安神宮や南禅寺といった歴史ある神社やお寺も多く、景観に適した工法として、また既存の樹木を最大限活かすための工法として、全天候フォレストベンチ工法が採用されました。

④ 二条通に面する京都動物園北側の敷地。 フォレストベンチ1段 約34m 緑がきれいな 水平面です。防災面より景観面に注目されて 施工された現場です。

 

以上、9時から15時過ぎまで、3現場を見学しました。天候も悪く、当初期待していたよりも少ない人数での見学会となりましたが、3現場ともとても見事な景観を保っていることを実感していただけたと思います。

防災面だけではなく、日本の景観には、絶対に必要な工法だと再認識することができました。今後も全天候フォレストベンチ工法の認知度を高めるため、工夫しながら広報活動を展開していきたいと考えておりますので、会員のみなさまには変わらぬご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

間伐・間伐材利用コンクール2016で、『林野庁長官賞』を受賞しました。
法人会員 中林建設㈱ 土木部工事課課長 永山裕元

 

この度、林野庁と間伐・間伐材関係19団体で組織する間伐・間伐材利用推進ネットワークが主催する間伐・間伐材利用コンクールの〈製品づくり・利用部門〉において、栄えある『林野庁長官賞』を受賞致しました。授賞式は東京都内で10月21日に開催され、中林建設株式会社 中林浩之社長が、林野庁長官より表彰を賜りました。

 

この間伐・間伐材利用コンクールとは、間伐材利用の取組み、アイディアなどを集め、さらなる間伐材利用の普及を活発化させることを目的として、平成12年より林野庁が主催となって開始されたものです。今大会で17年目を迎え、今年の応募総数は〈①-製品づくり・利用部門〉で31件、〈②-間伐実践・環境教育部門〉で26点の応募があったとのことです。(昨年度は①が56件、②が24件でした)

受賞内容は、林野庁長官賞と最高賞として、間伐ネット会長賞、間伐推進中央協議会会長賞、審査委員長奨励賞、特別賞(2件づつ)から構成され、2部門で合計12部門の技術や取組みが受賞致しました。

〈製品づくり・利用部門〉で最高賞に選ばれた 私たちの「全天候フォレストベンチ工法」は、従来コンクリートが使用されている斜面防護に間伐材を利用し、植樹と土留壁化粧材の間伐材使用によって、景観性の向上と間伐の促進につながる点や、地元の間伐材を使うことで地域住民や林業関係者参加型の森林保全・間伐材利用が実現できる点などが、評価されました。

これまでは、当工法がもつ安全性や透水性、森の再生などが、国や自治体、個人ユーザー様から評価され、多くの斜面に安全・安心を提供してきましたが、今回は、全国の森林行政のトップである林野庁から、間伐材を利用し、且つ森林事業の活性化を図る工法として評価されたことは、従来の安全性や景観性に加え、間伐と森の循環機能を持つフォレストベンチの環境的機能や、森林事業者と密に関わっていく環境社会への貢献性を評価されたものとして、今後展開に新たな一歩を踏み出すことができたと評価したいと考えます。

 

今後はこの『林野庁長官賞』を皮切りにして、各地方の森林整備事務所や農政事務所などに広く工法のPRを行い、フォレストベンチ工法による間伐材の利用から始まる森林保全や森林事業の活性化について議論をし、今後の発展につなげていきたいと考えています。

 

最後に、林野庁へのPRへ伺う入口を作って頂いた関係者の方々、そして間伐材の利用について広くアドバイスを頂いた林野行政の方々に、深く感謝を申し上げたいと思います。

 

開催委託先のHPにて、各受賞者や表彰式の模様がご覧いただけます。

⇒ http://www.eco-online.org/forest-good/

 

 

現場だより(平成28年11月)

 

◆今回、河西理事の記事で津波対策が紹介されましたが、日本各地の海岸線の多くは風光明媚な景勝地から成っており、それを隠してしまう防潮堤は観光を生業とする人達を貧してしまう、恐ろしいものです。

 

◆コンクリート防潮堤より緑の防潮堤が優れているとして、造るならコンクリートは排すべきと考えてきました。

 

◆宮崎の日南海岸は、珍しい波状岩で出来た「鬼の洗濯岩」が観光の目玉ですが、その上に防潮堤が載ってしまうと、全く興醒めです。

 

◆しかも、津波は防潮堤の規模に合わせてくれませんから、観光資源を失った分に見合う効果が得られるとは限りません。

 

◆それなら100年間の生業を維持して、いざというとき高台避難を可能にする方が大幅に経済的であり、人命保全も確実であると考えます。

 

◆斜面にコンクリートが被せてあっても、フォレストベンチを用いれば車で登る斜路を設けることは可能です。自然を壊してしまうと元に戻らないことを重々考えて、正しい選択をすべきと考えます。

 

 

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


関連記事