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STEP(第187号)

潜在自然植生理論とフォレストベンチ工法
フォレストベンチ研究会 理事 宮城県仙台市 輪王寺住職 日置道隆

私が住職を勤める仙台輪王寺は、境内に植樹を始めてかれこれ13年目となる。平成18年より3年間かけて50種類18000本植樹した参道は、成長途中ではあるが今や鬱蒼とした森に囲まれている。「いのちと心が廻る寺づくり」を標榜し、多くの檀家様や市民の皆様とともに木を植えてきた。寺全体ではおよそ33000本を数える。ここで行われてきた植樹方法は横浜国立大学名誉教授宮脇昭先生が考案したものであり、世間は宮脇方式と呼ぶ。もし人間の影響をすべてストップした場合、日本の国土の98%は森になるという。3~4万年ほど前に日本に人間が住むようになったと言われているが、文明が発達する以前の日本はそれこそ鬱蒼とした森に覆われていたはずである。つまり海に囲まれ温暖で雨量も豊富な国土のほとんどが自然の状態では森になるという豊かな土地柄なのである。

潜在自然植生理論とは、植物生態学上の概念で、一切の人間の干渉を停止したと仮定したとき、現状の立地気候が支持し得る植生のことであり、1956年ドイツのチュクセン教授により提唱された。宮脇方式の植樹とは、その潜在自然植生理論に基づき、その土地本来のいろいろな種類の木々を判定し、1m2あたり3本のポット苗を市民の力で植えると超密植・混植するという独特なものである。約20年後には木々が成長し、土地本来の多層群落の森、自然に近い状態の森が出来上がる。宮脇先生は、「この方法を世間は宮脇方式と言うが、私から言わせれば自然が私に教えてくれたものである」とおっしゃる。言い得て妙である。つまり、本来あるべき自然の姿に返すというのが宮脇方式の真骨頂であろう。

宮脇先生は、1960年にドイツからこの潜在自然植生理論を日本に持ち帰り、広めようとしたが、当時誰にも相手にされなかったそうである。しかし、そこでくじけるようなへなちょこではない。「危機はチャンス、不幸は幸福の始まり」と自らを鼓舞し、愚直なまでに、この理論に基づく実践として市民と共に宮脇方式の植樹を続けてきた。その徹底した姿は、まさに野武士の如くである。40年以上にわたり国内外に約1700か所4000万本以上の土地本来の木々を市民と共に植え、森づくりをしている。尋常ではない。現在この理論は第三の植生理論として国際的に認知されている。より多くの一般の人々にも知って戴きたい。

輪王寺と市道を跨がる急斜面に、平成20年フォレストベンチ工法を施行し、同年5月に近隣の皆さんと植樹式を行なった。831本の土地本来のいろいろな種類の幼苗を植えたその斜面は、現在木々が生長し森となって斜面を覆い、「いのちが廻る森の斜面」になっている。自然にある森は自己完結している。森の中では常に生命が生滅を繰り返し、水と窒素が循環し、森が「生命の塊」となって、全体としてバランスを保ちながら存在する。つまり手入れをする必要がない。そのような状態こそが自然の一番強い表現力なのである。

平成20年5月 多くの市民が集い、フォレストベンチ工法の水平面に幼苗を植えました。

フォレストベンチ工法は、斜面に段々畑のような水平面をつくり、水捌けを良くすることに貢献する。そして雨によって表土が流出することを防ぐ。その水平面を自然に近い森で覆うということは、地下部は木々の根がしっかりと網羅され、地上部を支える。地上部の枯れ葉や落枝が土壌生物や微生物により分解され、豊かな土壌をつくり木々の生長に役立つ。さらには土壌の保水性が高まる。森は木々と関連する生物らが生滅を繰り返し生長し、その循環力を高めながら永年存続する。斜面自体が呼吸し生きている。そしてしなやかな強靱さをもった「いのちが廻る森の斜面」は防災・環境保全林となり、私たちの生命と心と財産を守ってくれるのである。

このように、フォレストベンチ工法と潜在自然植生理論に基づいた森づくりには親和性があり、双方とも斜面が多い日本に欠かせない技術であると確信している。是非多くの地域で実践して戴きたい。

左:平成28年撮影。輪王寺と市道に跨って施工されたフォレストベンチ工法の現状。もっと暖かくなれば、斜面は緑で覆われます。 右:フォレストベンチ工法の対面はコンクリート擁壁になっています。比べてみてください。

植樹マンと一緒に木を植える子どもたち。植樹マンは輪王寺発のキャラクターです。

 

地元の自治会活動を経験して~駅前、住宅地を流れる飯山満川(はざまがわ)の洪水対策について~
個人会員 ㈲トムラ不動産鑑定 不動産鑑定士 戸村澄夫

 

私が、本年度自治会の役員を仰せつかっての経験です。平成25年10月関東地方を襲った台風26号で雄鹿野(おじかの)住宅地を流れる飯山満川はあふれ、住宅地の道路は、川のようになって濁流が流れてゆきました。自宅の駐車場に停めてあったマイカーの中には、エンジンルームに水が入って動けなくなった車もありました。

雄鹿野住宅団地ができてから40数年たちますが、古くから住んでいる住民に聴いても初めてのことだと言って驚きの色を隠しません。この時は、1時間に55mmの降雨量があってこの被害にあったわけですが、台風26号程度の降雨量に対応できる空堀の大きな調節池がいよいよ28年度から3~4年計画で工事が始まる運びとなりました。

県の土木事務所長さんはじめ関係者の理解があったこともありますが、なんといっても住民の強い要望と結束力があってここまでこぎつけたことと思っております。

この計画の概要について述べてみます。

1.飯山満川が増水して一定水位を超えると、2800トンの水量をためることができる空堀の調節池に水を流し込んで川の水があふれないようにするための池です。そして、川の水位が下がると池から川に水が戻って普段は空堀にしておく計画です。

護岸もかさ上げして水が住宅地に流れ込まないようにもします。3~4年計画で約7~8億円の大工事です。

台風26号では、増水して右側の住宅地に浸水した。

当面この工事が完成すれば、住民は、台風26号程度の大雨には安心して眠れるというものです。

これは、あくまでも緊急対策です。異常気象が続く昨今では、台風26号を超える降水量がいつあるかもわかりません。

そこで県では、それに備えて、1時間に70mm、80mmの降水量があっても対応できるように5000トンの水量に対応できる設計を織り込んで将来に備えてくれています。

これを実現するためには、川底を深くしたり川幅を広げたりしなければなりません。下流域の一部には、そのための用地買収ができていない地域もあります。

そこで今回は、緊急対策として当面台風26号程度の水量には耐えられる対策を講ずることになった次第です。

台風26号では、飯山満川(はざまがわ)が増水したため内水化した。

2.河川の補修工事は、下流から手を付けるのが鉄則です。いくら上流部分を補修工事しても下流部分が整備されていなかったら、上流部分ではあふれてしまいます。

私は、今回の工事決定は、県の責任ある立場の方々の大英断であったと高く評価しています。

台風26号があった年の翌年の4月に新しく着任された葛南土木事務所の所長さんと面談する機会がありました。何度かお会いした後にこの話になったときにその所長さんの言葉が忘れられません。

「河川の補修工事は、下流からやるのが鉄則ですが、そうも言っておれませんね」と。

幾分下向に、やや沈んだ真剣な面持ちでそう言われたのです。出来ないという理由。工事を先延ばしする理由は、いくらでもつきます。

「河川の補修は、下流からやるのが鉄則です。」「下流部分には、まだ用地買収ができていないところがあるので、下流部分の工事ができないのです」と。地元の古い役員経験者の話では、そう言って15年先延ばしにされてきたと言っておりました。

3年前の台風26号の時には、道路が川のようになって水が流れる中、その時の自治会長と防災団長が身の危険を顧みずにビデオカメラをもって水の中を撮影し歩き、貴重な写真を残してくれました。これが、その後の県や市との折衝でどれほど有効に働いたかしれません。そして、住民がこぞってこの役員を支持したことが大きかったと思います。受ける役所側の理解と住民側の熱意が一致した成果であったと言えます。

何事もできないことには理由があります。ですから、できない理由を述べるのではなく、できることは何かを探してできることから実行すべきだと思います。出来ることからやっていくうちに、できない事情を乗り越える方法が見つかるものです。

今回は、まさしくその好事例であったし、よい勉強をさせていただいたと思っております。

 

千葉県安房郡鋸南町・種田邸裏山土砂災害再発防止工事
個人会員 ㈱国土再生研究所 入井徳明

 

経緯 3月28日、小雨模様の午前10時過ぎ上記工事の完成引き渡し検査が行われ、今後土砂災害再発の不安を一掃した顧客の安心と感謝の言葉と共に、引き渡しは無事完了した。

昨年夏季の豪雨は、千葉県鋸南町に位置する種田邸の裏山から勝手口にまで突出する土砂崩落を招き、次の豪雨時には間違いなく更なる大きな被害を予測させるものであった。今後の対策に関する種田氏からの問いかけは正月明けの1月5日、時をおかず栗原代表は自身による現場調査を開始し、対策のための図面作成、工事見積り、工期を打合せ合意に至り、2月1日よりフォレストベンチ第一段目の工事に着手した。現場は3軒隣り合わせの住宅地(中央・種田邸)、裏山斜面は最大勾配40度、敷地境界から山側は幅15m~18m程、緩やかな左カーブの谷あいとなっており、尾根まで水平距離で約50m、過去の崩落土が堆積し湿地帯の様相を呈している。30年前にも同じような地滑りがあったという話があり、今回の崩落は起こるべくして起こったと言える。

施工結果 当初設計数量 FB・透水衝立総面積合計114m2(FB3段・衝立1段)に対し、施工実績数量FB・透水衝立総面積合計125㎡(FB4段・衝立1段)。

工事完成全景写真 最下段より4段目までフォレストベンチ、 最上段が透水擁壁、最下段には間伐材により被覆した。

現場の地形状況に合わせた柔軟な施工がフォレストベンチの特徴である。着工後現場に即した最適の配置として、境界から裏山の勾配約40度と急な部分のフォレストベンチを3段から4段に変更。段数は増えたが谷幅の狭い部分の受圧板本体の長さを現場合わせにより短くしたことで数量的には大差は無い。客先の要望を重視し、極力平地部分を確保する為に2段目以降のベンチ幅を2.0m~2.2m(標準1.5m)とした。

種田邸の勝手口まで崩落、突出し恐怖を与えた土石及び立木。倒木。次の豪雨が来ればその被害は計り知れない

内房保田湾を見下ろす最上段の透水擁壁部。標高8m、奥の方悪土石の受け皿となり種田邸を守る。

民間工事に初の透水擁壁方式の採用

一昨年10月北海道手稲の採石山で行った人工的落石実験により、アンカー及びワイヤーで固定された受圧板の耐衝撃性が証明された。昨年5月引き渡しの東京都・日野緑地法面整備工事では業界初の透水擁壁方式の採用として注目を浴びたが、今回は民間工事としてこれが初の採用となる。日野の現場では工事中の万が一の落石・落下物及びゲリラ豪雨などによる土砂崩落等からの防護のため、第1段目(最下段)の受圧板として衝立を採用した。今回は逆に衝立を最上段に設けることにより、豪雨・地震等による擁壁から上部の崩落土石の衝撃を吸収し、またその受け皿となる機能を有するものである。因みにその容量は幅10m、高さ2m、奥行き10m余り約200m3を超す崩落土石の受け皿となるものであり、今回種田邸に崩落した土砂は約100m3程度と推定されるがこれで倍以上の安全率を有することなる。

透水擁壁の心臓部 アンカーボルト及び結束したワイヤーが受圧板を支え崩落した土石をがっちりと受け止め安全を確保する

今回も地道で誠実な近隣対応でトラブル無く、注意深い安全対策により無事故無災害で工期内に無事工事を終えた施工部隊に感謝の言葉を贈りたい。

 

現場だより(平成28年4月)

 

◆4月14日(木)の夜から始まった熊本地震は16日未明にM7.3を本震として北部・南部方向に拡がりながら無数回の余震によって、国民に地震の恐ろしさを伝えています。

◆九州北部豪雨の爪痕を見ようと阿蘇地方を訪れたのは4年前と記憶しますが、南阿蘇町の斜面災害や熊本城の石垣崩壊を見ると、地震と豪雨を同時に防災する「複合防災力」というフレーズが頭に浮かびました。

◆巨大地震の可能性は全国的なものであり、これからの梅雨や台風に備える防災と重なることが十分にあり得るからです。

◆千葉での工事が完了し、目下のところ受注待ちの状態で「現場だより」の題材にも欠けることから、「複合防災力」を発揮できるのはフォレストベンチ特有のものということで、取り上げて見ました。それは「環境 保護」の側面から 地球の自然を根幹から改善することによって可能であると確信します。

◆「複合防災力」は、「特別警戒 区域の指定解除」にも、関係してくるのではないかと期待しています。レポートは出来上がりましたので、ご興味のある方にはメール等でお送り出来ます。ご希望をお待ちしています。

◆尚、フォレストベンチ研究会は来る6月29日(水)午後1時30分から総会、午後5時30分より懇親会を開催します。会場は例年通り永田町の都道府県会館です。多数の皆様のご出席をお願い致します。

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