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STEP(第186号)

大月市内及び山梨県内の斜面の現状紹介~大月市内山奥の林道沿い、小菅村、早川町の事例~
ユーザー会員 山梨県大月市在住 河西悦子

○大月の深層崩壊 

以前、フォレストベンチ会報誌の169号(平成26年10月号)に樋口氏が書かれた「フォレストベンチの更なる役割」の中の、平成23年台風12号の後に起きた大月市の深層崩壊、その後の状況です。

平成26年11月26日、『相模川流砂系総合土砂管理計画の骨子案』が以下のように出されました。

1.相模川流砂系における土砂管理に係る問題

(1)土砂発生域

土砂災害の発生の危険性。平成23年に山梨県大月市で深層崩壊による土砂崩れも発生

→有害な土砂移動を抑制するため、砂防堰堤等を設置し土砂流出対策を実施。(確実な土砂災害の防止のため人家の直上流では不透過型砂防堰堤を整備、その他の箇所では透過型砂防堰堤を整備し平常時の下流への土砂供給を図っている。)

この中には、以前樋口氏が指摘したように、深層崩壊した山林一帯の森林管理や周辺の治山事業、流れ込む河川工事等重層的に関連しているのではという考え方は、残念ながら一つも伺えません。

深層崩落の現状

昨年9月、栗原さんと小菅までご一緒した折、深層崩壊の現場が見える場所を撮影しました。尾根のところが一部フリーフレームのような形で、その下から水の流れが見え、その両側の土肌がむき出しで、下部に堰堤がつくられていました。このような工事しかできないのかと、疑問が残ります。確か、昨年の10月で工事は完了となっていると思います。

 

○大月市内の林道沿いの斜面崩壊

山林を80%も占める大月市では、急峻な斜面が多く存在します。奥まった林道沿いの斜面、普段、車は通行止めになっているため、ほとんど市民の目に触れる機会はありません。調査で通った時、以下の現状が目に付きました。コンクリートを吹付けた斜面が、何カ所も崩落しています。人間の都合で自然の状態を改変していくとき、その周りの状態の変化を総合的に考える視点、森林は生き物であるという視点を大事にしていくべきではないでしょうか。費用対効果等の問題はあるが、長い目で見たら、こういう場所にもフォレストベンチ工法は有効なのではないでしょうか。

林道沿いの斜面崩落の様子

○小菅村役場とその前面の斜面

昨年、平成27年3月、小菅村の役場の新庁舎が完成しました。地元地域材を使い、村民にも様々な 配慮がされ、素晴らしい工夫もされた魅力的な庁舎です。一見の価値があります。しかし、その庁舎の川を挟んだ前面の山の斜面が崩落していた箇所は、旧来のコンクリートを使った工法で工事がされていました。

一部木材も使われていましたが、庁舎が素晴らしいだけに、目の前の斜面の様相は、少々残念な気がしました。

小菅の新庁舎前の斜面の現状

○早川町役場とその裏山の斜面

昨年の11月、大月市よりも急峻な斜面をたくさん抱えている早川町の現状を見に行く予定で、町長さんとお会いすることになり、早川町の役場に伺いました。

丁度その時、早川町も役場の新庁舎が完成、移ったばかりの時でした。地元の木材をふんだんに使い、小菅村の新庁舎とはまた違った素晴らしい庁舎ができあがっていました。しかし、ここでも、庁舎の裏手、斜面崩落の工事は旧来のフリーフレームの工法で施工されていました。木を魅力的に使った庁舎が目の前にあるだけにがっかりです。

早川町役場裏手の斜面

今回の3つの事例は山梨県の工事です。県がこの工事の発注者です。山梨県内には、今回のような斜面は随所に見られます。山梨県も会員である桂川・相模川流域協議会の総会で、栗原さんにフォレストベンチ工法を紹介して頂きましたが、行政は縦割りで、情報も一部の部署だけにとどまってしまいかねません。フォレストベンチ工法、山梨県にも、もっと強力な情報発信・働きかけが必要ではないかと考えています。

 

近年の緑化問題について「緑との縁(えにし)」
個人会員 ㈱コンシャス 伊藤元美

 

21世紀は「環境の世紀」と言われています。津波や台風などの自然災害の頻発、地震、地球温暖化、生き物の大絶滅など我々を取り巻く環境問題が最重要視されているのは周知の通りです。これまでの大量生産・大量消費という社会構造が曲がり角にきており、環境問題の解決に向けてのステップは何か、どんなふうに環境問題を捉えればいいのか、国を挙げて各自治体で、または各企業、団体および個人でも 様々な取り組みや提案がなされています。

その環境問題の中でも特にクローズアップされているのが地球温暖化の防止、ヒートアイランド現象の緩和のための「緑」の確保です。近年、「屋上緑化」「壁面緑化」「都市緑化」と言ったように、本来あるべき場所ではない所に緑を演出して、ビジネスにするような風潮が持て囃されています。しかし、緑の立場に立って見れば、どのように過酷な悪条件の下でも生きられることを証明するよう要求されているようで、少々気の毒な想いを禁じ得ません。人間の都合からの要求で、当の人間だったらとても耐えられない過酷な要求に見えるのです。

一方で、緑が地上から数を減らし続けていることも、大いに影響しているように感じます。人々が日頃目にする多くの場所にコンクリートが幅を利かせて、緑を押しのけて醜く居座っているからです。かつては森林だったところが、道路や鉄道などの公共物を設けたとき、のり面は先ず緑が剥がされて、何らかの形でコンクリートが用いられ、表向きには安全が図られたと言われます。そうでなければ、高価で劣化が激しく醜いコンクリートが、これほどに使われる筈がありません。しかしコンクリートを用いたのり面・斜面が本当に強いのか、疑ってみる必要がありそうです。

コンクリートを代表とする人工物は、何時か劣化して壊れ姿を消しますが、東日本大震災での防潮堤のように津波をかわすことが出来ずに壊れるケースも多くあります。人間の一生で計る50年が基準では耐久性に不足は無くても、津波の百年というスパンでは耐久性に不足が出ます。既に50年を過ぎたコンクリートの殆どは次の50年では機能していない可能性が高いのです。一方、生命力を持つ緑の方はその生長の限界まで育とうとする(DNA)を持って生まれて来るので、時間が経つほど強さを増し、頼れる存在となります。つまり、人工物と緑は全く逆の存在だということになります。

その中で、根の働きは、防災という観点から、極めて重要です。鉄を含む人工的引張り力は例えステンレス鋼でも何時かは劣化しますが、根の引張り力は何物にも邪魔されずに、時間と共に生長し、強さを増して行くので、世代交代する約200年先の更にその先まで、命を繋ぎます。

地球に恐竜が誕生する遥か以前から植物が存在したことを思うと、巨大な樹木が森を成したのは、決して人間の為ではないようです。最近BBCのテレビ放映で、花は昆虫の力を借りてより広く繁殖する為に、シダ植物から進化し様々な「花」を咲かせるようになったと報道されていました。人間の側から見ると、恰も我々を楽しませる為に花は存在しているようですが、それは思い上がりのようで、酸素を創った葉緑素も花も根も幹も、全て緑自身が繁栄する為のしくみです。

ど根性大根の「大ちゃん」

10年ぐらい前になりますが、ど根性大根と名づけられた大根がアスファルトを突き破り、頭を出しているのが発見され、そのたくましい姿がメディアに引っ張りだことなり全国的なブームを呼びました。これは極端な事例ですが、これからすると生命の背景には、侮れない力が潜んでいます。

環境問題について考えるとき、人間は「自然を破壊することなしには生きていけない」 生物であるとも言われます。それは、より快適な生活を追い求めてきた代償に地球のあらゆる地下資源を食いつぶし、大気成分を変える程に環境を破壊してきたからです。

「緑化」と聞くと何となく環境を大事にしている感じがするため、企業が広報活動やイメージ戦略として「屋上緑化」等に飛びつきます。しかし、防水や排水・通気性の確保や土壌の軽量化、水やりや剪定などメンテナンス面でお守りが出来なくなると放置されているケースも見受けられます。

我々は自分たちの都合で緑を大量に減らしておきながら、再び「緑化」と言って再び我々の都合で不自然な形で緑を増やすのは、改めるべきと思うのです。

緑に地球環境の建て直しに尽力して貰うには、最も自然な状態で肥沃な土壌を提供し、緑が恒久に望む安定した環境を確保することが、我々人間の役割であると考えます。

ビル群の中の屋上緑化

※ 「えにし」とは、「縁(えん)」の転じた「縁(えに)」に強めの助詞「し」の付いたもの。古めかしい語。

 

巨大地震から未然に命・財産を守るパイプグリッド工法
フォレストベンチ研究会 宮崎支部 代表 川添祐一郎

引張り力に対して、全く防御機能を持たないコンクリートにとって、直下地震ほど過酷な衝撃は無い。鉄筋で補強されたもの(鉄筋コンクリート)でも、長い間に互いの縁が切れたり割れたりすると、鉄筋の効力はコンクリートへ伝わらず、コンクリートは単独で地震の揺れに耐えなければ成らなくなる。地震の揺れは、コンクリートに圧縮力と引張り力とを交互に及ぼすので、圧縮力の反発による弾みで引張り力が増幅することもあり、粘り気の無い重い物体が地震を受けると、実に厄介です。

写真①は、地震によるものかどうか別にして良く見る光景です。前回の寄稿でパイプグリッド工法を紹介しましたが、今回は力学的合理性について、栗原理事からの指導内容を復習しながら、お伝えしたいと思います。

フォレストベンチ工法は、アンカーを元手に引張り力を地山から確保して、垂直の透水六面体で土砂を囲い、巨大な土嚢を構築するユニークな斜面防護工です。そのアンカーの機能を既存コンクリート構造物の補強に使えないかと展開したのが、パイプグリッド工法である。しかし前回の寄稿では、急傾斜の斜面を対象にしてこの仕組みがより効果的に使えないか、逆利用したことになります。

つまり、パイプグリッド工法のアンカー機能と、間伐材の耐久年数とを組み合わせたら、より経済的なフォレストベンチ工法が新しく生まれるのではないか、というのが発想の原点だったようです。破損したコンクリート塊を縫い付けて、恰も一体のコンクリート構造物に見せかけようというアイデアは、圧縮力には無類の強さを誇るコンクリートに、もう一度活躍の場を与えて働いて貰おうという親心が感じられます。

離れ離れになったコンクリート破片も、写真②のように、アンカーとパイプで繋げば、元よりも強化されて安定を高めます。地震対策として、家具調度品を互いに繋いだり壁や柱に金具で取り付けるのに似ており、PC橋梁で言えば「アウトケーブル方式」に相当し、コンクリートに圧縮力を与える構造そのものだと言います。巨大地震が起きることは、歴史的にも確実であり、少しでも被害を縮小する努力が必要です。巨大な自然破壊力がどのようにして発生し、伝わるのを辿って行けば、多くの命や財産が救われる可能性があります。

パイプグリッド工法には、引張耐力を地山と一体のアンカーに任せた処に、大きな特長があります。アンカーは軸方向の最大抵抗力に加えて、その直角方向のせん断力に、大きな変形(曲げ)をもって引張耐力の半分の抵抗を発揮します。そしてアンカーには抜けないこと、切れないことが求められるので、その為にアンカーの頭部には「箱3型」と呼んでいる特殊座金(写真③)を用います。

この座金は、ボルトの許容応力度5.5トンより低い3.5トンで座屈するように造られており、地震荷重がボルトの引張り限界に近付いたとき、いち早く座屈変形して、ボルトの破断を防ぐものです。

座金には変形しながら地震荷重を吸収させ、地震が過ぎ去った後、次の地震に備えて取り換える、という考え方です。アンカーの取り換えは厄介ですが、座金の取り換えなら実に容易かつ経済的に出来るからです。地震が交番応力であり、周期的な荷重として作用することを利用して対応すれば、アンカー鋼材等の素材を破損させずに、安定力を確保する減災灯が実現します。

 「柔よく剛を制す」の教え通り、柔の機能を導入すれば、直下地震からも命や財産を守ることが可能です。

ボルトやパイプ・ワイヤーなど鋼材には伸びや変形で、巨大な自然力をかわす機能が備わっています。安全を確保する時に、自然の破壊力(営力)の正体を正しく見極めることが肝要です。雨水には透水性地震には変形・変位で応じることが、防災の秘訣であるように思います。是非、この仕組みを試して欲しいと思っています。

 

現場だより(平成28年3月)

 

◆この1月に受注した千葉県安房郡鋸南町の工事は、2月から本格的な施工に入り、3月28日(月)に施主へ引き渡す時期となりました。

◆次の号で写真をご披露できたらと願っておりますが、最下段だけ間伐材で被覆することとなりましたので、美しく仕上がることと期待しています。

◆着工する前は、両隣の住民の方への説明、立会いに際し、誓約書灯なるものを要求され、やっかいな現場になるかと懸念しました。

◆しかし、工事が進むにつれて通りがかりの人達や役所からの見学者も訪れるなど、周りの目も暖かく感じられるようになりました。

◆この裏山には、植生の無い凡そ30°の傾斜が50m程続いており、そこからの落下土砂を止めるのに「透水衝立」を提案し、採用されました。

◆日野市では、住宅の直上に設けて、工事中の土砂落下にも備えましたが、ここではフォレストベンチの上側へ設け、長大な傾斜地からの土砂落下に備えました。透水衝立工とフォレストベンチ工法とのコラボは、局地的豪雨から住宅を守る決定打となることを期待しています。

◆首都圏では、特別警戒区域の指定解除が大きな課題ですが、東京都と千葉県とで透水衝立は2件目の施工となりましたので徐々に事例を増やし、資金に余裕が生じれば、札幌での実験に引き続いて実証実験に取り組みたいと、願っています。

 

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