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STEP(第182号)

津波防災の日
フォレストベンチ研究会 理事 輪王寺住職 日置道隆

「稲むらの火」のお話をご存じだろうか。1854年11月5日、和歌山県広村(現在地有田郡広川町)を大津波が襲った。安政南海地震津波である。村長(おさ)の濱口梧陵は田んぼの藁の山(稲むら)に火を放った。村人たちは暗闇の中、稲むらの火を頼りに高台にある神社境内へ逃れることが出来たという。この話は現在でも津波防災の象徴として広く語り継がれている。さらに梧陵は、莫大な私財を投じて被災した村人たちを雇い、4年の歳月をかけて1858年に広村堤防を完成させた。

勝海舟や福沢諭吉とも交遊があった梧陵は、明治維新・教育改革にも関わり、多方面において活躍した人物である。興味を覚えた私は、東日本大震災の2011年6月23日この地を訪れた。

そこには、高さ5m、幅20m、長さ600mの土を盛った大堤防が確かにあった。海岸に面した堤脚の松並木は、一度マツクイムシで全滅したが、植樹し直して現在は2代目が育っている。堤防の上は遊歩道になっており、周りにちらほらとハゼノキが植えられている。後背地に散在する民家は、この堤防によって1946年に襲った昭和南海地震津波から護られた。しかしその時、堤防に阻まれた津波はその外側を迂回して侵入し、付近で22名もの村人の命を奪ったことも忘れてはならない。施設だけに頼ってはならないという大きな教訓である。「津波が来たら高台に逃げろ」が鉄則であろう。

浜口梧陵が築いた土塁の堤防法面に、生態学的知見による土地本来の高木・中木・低木の苗木を市民が協働して植える。約20年後には、私たちの生命と心と財産を守る多様性のあるふるさとの森になるというのが「森の防潮堤」構想である。

森の防潮堤にフォレストベンチ工法の技術を加味することは非常に有効であろう。宮城県北部から青森県に連なるリアス式海岸では平場が狭い。このような土地柄に堤防を築くとすれば、どうしても法面角度を鋭角にせざるを得ない。そこでフォレストベンチ工法が本領を発揮する。今や、様々な思考や技術の融合が必要とされる時代なのである。技術は、自然を活かす形で使われてこそ意義が出る。

平成23年6月に「津波対策の推進に関する法律」が制定され、国民の間に広く津波対策についての理解と関心を深めるため、内閣府はこの安政南海地震津波が襲った11月5日を「津波防災の日」に指定した。

広村堤防横断図 (北側から南向きに見た場合。海までの距離は埋立て前) 海側から(右から左に向かって)、15世紀初頭に畠山氏が築いた波除石垣(堤防石堤)、浜口梧陵が 植林・築造した松並木(防浪林、防潮林)と土盛りの堤防(防浪土堤)がある。

本年同日に、私が理事長を務める森の防潮堤協会と生存科学研究所、そして日本フィトセラピー協会が三者合同主催で、「津波防災シンポジウム2015」~ 子どもたちと描く千年希望の未来 ~を麹町のTOKYO FM HOLL で開催した。主催者は、生物学と医学と植物療法を主とした団体であり、講演者も、津波工学、脳科学、動物行動学、植物生態学、遺伝子学と多様である。

さまざまな角度から東日本大震災を検証しつつ、宮城県岩沼市「千年希望の丘」の取り組みを紹介しながら、未来に向けて、自然との共生という日本の伝統に立ち返った防災・減災のあり方を子どもたちとともに探求した。

なぜ今、様々な視点から津波防災を検証しなければならないのか。4年半前に大津波が襲い、多くの尊い命が奪われた。震災復興は、スピードを重視するあまり、画一的で効率重視となってしまい、そこには生命に対する認識、自然への畏怖、地域の伝統文化、そこに住む人々の生き様等が圧倒的に欠落していると感じるからである。

自然は多様であることが、人の手を加えずに自ずとバランス良く保たれるための条件である。かたや人工物は画一的であり、造った時は堅牢であるがいずれ崩壊する。つまり持続可能ではない。適材適所をきちんと考え、科学技術を主とした文明と自然との調和を如何にして実現させるのか、今こそ深く考察するべきなのである。

11月5日は津波防災の日である。いろいろな視点から安全安心について考える良い機会であると思う。

内閣府「津波防災ひろめ隊」隊員・植樹マンによる津波避難ポーズ 東京FMホールにて

 

第1回ウッドデザイン賞2015・二次選考への対応の顛末記
個人会員 フォレストセイバー研究所 総代表 林 哲久

 

このたび、『第1回ウッドデザイン賞2015」の技術・研究部門に「全天候フォレストベンチ用強靭化木材竹の利用促進」という作品名にて合同会社ベルリンの名で応募いたしました。

ウッドデザイン賞とは、木の良さや価値を再発見させる製品や取組について特に優れたものを消費者目線で評価し表彰する新しい顕彰制度で、建築、木製品、取組、技術、研究など木材利用促進につながるすべてのモノ・コトを応募対象としています。

主催者は特定非営利活動法人 活木括木(いきいき)森ネットワーク、公益社団法人国土緑化推進機構、㈱ユニバーサルデザイン総合研究所の3者で、ウッドデザイン賞運営事務局となっており、林野庁の後援を受けております。

審査委員は、建築家・隈研吾氏、プロダクトデザイナー・益田文和氏、アーティスト・日比野克彦氏らのお名前が公表されております。

賞の構成は最優秀賞・優秀賞・奨励賞・ウッドデザイン賞の4つですが、途中で、最優秀賞には農林水産大臣賞が、優秀賞には林野庁長官賞がそれぞれ授与されることが発表されました。

去る9月1日に応募の受付が開始され、10月7日に応募の受付が終了しましたが、応募数は800を超し予定より多かったため、受賞者の発表は11月19日に延期されました。残念ながらこの原稿の執筆中の現在は、まだ発表がなされておりません。

さて、同賞の存在を知って応募要項等のネット掲載資料を検索し、その内容を読んだところ・・・『これは正にフォレストベンチを呼び込んでいる!!』とばかりに小躍りした筆者でしたが、応募要項を読み進むうちに憂鬱が押し寄せてきました。

なぜならば、申請書類の量も質も相当の物であり、提出は電子資料が基本だと言うからです。(不得意です。失笑)それに加え、審査基準が厳しい事、ハードルが高い事!!を知ったからです。

また、丁度、別の取り組み≪竹を利用したフォレストベンチ工法というテーマで、所謂『6次産業化認定事業者成りの申請』作業中≫も佳境を迎えており、正念場の時期だったため、6次産業化関連を優先するという言い訳を持ちだして此方は断念したのでした。

そんな折(ウッドデザイン賞応募の締め切りが2日後に押し迫った時)、に事務局から届いた一通のメールの内容を見てウッドデザイン賞への応募を再考したのです。その内容とは

①ウッドデザイン賞の特別賞を設けた、こと。→農林水産大臣賞と林野庁長官賞。

②特別賞を設けた事により応募締切り期日を一週間延長します・・・とのこと。

ウッドデザイン賞も6次産業化も双方ともに農水省関係なので『根元は一緒だ!』と、勝手に解釈の末、結局、二兎を追う形に相成った次第です。(6次産業化申請は遅延気味)

程なく、一次審査通過の嬉しい知らせが届きました。「ふんふん」と鼻歌交じりで小さな喜びに浸りながらに見た知らせは、私に『奈落の底』を見せ付ける程のものでした。

二次審査に向けて用意すべき資料が≪誇らしく!!≫並んでいましたが、これは対応するには、時間も費用も投入スタミナも一次審査とは桁外れのレベルでした。(詳細は割愛します)

最大の難関はポスター製作でしたが、これはあっさりとケリを付け、当方お抱えの『顧問デザイナー』に制作を委ねました。それが別掲の物です。また、申請内容のうち参考にして頂きたい文章もありますが、次号にご紹介しますのでご覧下さい。

  • 二次審査の結果次第によっては続報としてこの会報の場で、また報告いたします。

 

編集部註:

2015年11月19日 ウッドデザイン賞運営事務局は「ウッドデザイン賞2015(新・木づかい顕彰)」の受賞作397点が選出されたことを発表しましたが、合同会社ベルリンの作品「全天候フォレストベンチ用強靭化木材竹の利用促進」は技術・研究部門での受賞者として発表されました。

なお、農林水産大臣賞をはじめ上位賞を12月10日(木)に発表するとのことです。また、受賞作品については、年明けに発行予定の「コンセプトブック」に掲載されるほか、1月からはウエブサイトでも見ることができ、全国巡回展も予定されております。詳しくは下記でご覧ください。

http://www.wooddesign.jp

 

日野市の「フォレストベンチ工法」による施工現場を視察して
個人会員 ㈱トムラ不動産鑑定 不動産鑑定士 戸村澄夫

 

平成27年10月30日(土)午前9時、JR日野駅に集合して埼玉県議会議員の先生方を含めて総勢10名ほどで施工現場を視察しました。

㈲大島技建の大島社長に運転していただいたワゴン車と、議員のお一人が車でこられたので、その方の車に便乗して現地に向かいました。幸い、天気にも恵まれ視察には絶好の日よりでした。

現地について、先ず目にしたのは、斜面下の新しい住宅とその裏に迫る急斜面が、「フォレストベンチ工法」により施工されてしっかりと守られている光景でした。

その隣には、施工区域から外れているためか斜面が草木で覆われていて、下の新しい住宅がいつ土砂災害に見舞われるか分からない状態にありました。

未施工の斜面は、大雨によっては、土砂災害の恐れがありますので、下の住民がこの光景を知れば、住民の要望でいずれ同じように工事が行われるでしょうとのことでした。 約40度の傾斜を持つ斜面は、段々に仕切られ、垂直面に施された透水マットにより水は排出され、土だけが沈殿して地盤を固めます。今年の3月に完成したと言いますから約半年経過していますが、施工された区域は自然と調和して違和感は全くありませんでした。

各人が思い思いに現地の様子を見たり、写真に収めたりした後、栗原先生からフォレストベンチ工法の物理的・理論的なご説明や、日野市が工事の決断をした経緯などのお話をお聞きしました。

参加された議員の先生方も熱心に質問されたりメモをとったりして、この工法の優位性を理解して地元住民の防災に努めようとする姿勢が強く感じられました。

日野市での視察は、約1時間ほどで済ませ、この後、高尾山に向かい、ケーブルカーで、山頂に登り、八王子城跡トンネルの南側坑口(平成8年工事)の周辺の情景を眺望いたしました。ケーブルカーの駅を出て右側に行くと展望台があり、正面に2本のトンネルが目に飛び込んできます。その場所は、手前側左右に伸びる中央高速道路と、これとほぼ直角に縦に貫く圏央道の上下線の2本のトンネルがはっきりとわかります。

栗原先生の説明で、ほぼ同時期に斜面工事をしたにもかかわらず、「フォレストベンチ工法」で施工されたところは、工事場所がわからないほどに樹木が繁茂しているのに対してそれ以外のところは、工事の施工跡が明確に認識できる状態にあることがわかりました。

これは、「フォレストベンチ工法」が保水性と養分の保持に優れていることの証左であるとのことでした。

斜面工事に携わる方は、機会がありましたら是非、この光景は見ておいて頂きたいと思います。

 

最後に問題点を一つ指摘させて頂きたいと思います。

1.日野市の施工現地で感じたのですが、完成直後の写真では、青竹の矢羽で化粧がされており、出来上がりがきわめて優美で見とれるほどでありましたが、半年も月日が経つうちに美しかった青竹の矢羽は、色あせて見るからに見劣りするようになっていたことでした。

 

2.耐久性に問題がないと言っても見栄えも大事ですので、青竹に加工を施すなりして見栄えを保つ工夫が必要かと思います。さらに現場で栗原先生が言っておられたように、工事完成後速やかに水平面に植樹をして行けば、竹材が色あせる頃には、樹木が繁茂して景観を整えることができるものと思われます。

 

3.アンカーに使われる鉄材の弱点は「さび」ですが、これもクロムメッキ等により画期的に耐久性の向上が図られているとのことです。斜面を覆うコンクリートは地肌とコンクリートの間にしみこんだ雨水の浮力と自らの重さによって40年後で崩れ去ります。フォレストベンチ工法では、段々に仕切られた水平面にしみ込んだ雨水は、垂直に土にしみこみ、施工された金網と透水網から水だけが排出され、土が沈殿して地盤が固まります。

 

4.これまでに経験したことの無い異常気象による自然災害に備えるには、従来行われてきた工法ではなく、このたび日野市が実施したように異常気象に適応し、安価でエコに貢献する新しい工法「フォレストベンチ工法」による施工実績作りが強く望まれるところです。

フォレストベンチ工法による施工部分には樹木が繁茂している。(高尾山より圏央道の施工現場を臨む)

 

現場だより

 

◆日野市の施工地(視察)見学ツアー計画は、台風シーズンが終った9月から徐々に活況を呈し、10月30日、11月9日の両日は大勢の来客を迎えた。

◆高尾山と神奈川県真鶴町までを巡る1日コースは、職場を離れて見学に行けるのは半日が精一杯という反応が強く、急遽1日コースは取り止めた。

◆日野市と八王子市の高尾山なら午前でも午後でも半日コースで回れることを確認し、呼びかけると、八王子市から10名、埼玉県庁から10名という申込みがあった。

◆11月9日の日程が決まりかけた頃、峯岸市議から災ボ連の研修会をこの日にしたいという申し出があった。

災ボ連とは、「全国災害ボランディア議員連盟」のことで、峯岸市議がその幹事役を務められており、450名から成る防災の有志団体であり、現地視察後には日野市内で研修会を開き、机上での講演会や懇談会まで誘って頂いた。

◆10月30日の埼玉県グループを中心とする見学会では、高尾山頂までご案内して、圏央道と中央道のジャンクションでの緑の再生状態も見学して頂いたが、工事中や直後の山肌の写真と見比べてフォレストベンチによる緑の生長が著しいことを実感して頂いた。

(戸村会員の記事に詳しく述べられている)

◆11月9日の様子は次号で峯岸議員から報告の予定。

 

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