1. HOME
  2. ブログ
  3. STEP(HTML版)
  4. STEP(第181号)

BLOG

ブログ

STEP(HTML版)

STEP(第181号)

湘南海岸での体験から山や森林に寄せる想い
個人会員 フォレストセイバー研究所 総代表 林 哲久

この夏、数日間を湘南海岸で過ごしました。定番の砂浜遊び、自然観察、そしてビジネスに繋がる発見などがあり、「海も良いなぁと」改めて感じました。その様子を幾つかの写真でご紹介します。

『気になる工作物』を発見しました。工作物は海岸砂浜中の至る所に張り巡らせてありました。

小から中、大規模迄、其れはさながら万里の長城の様相を呈しておりました。その役割は「外敵というか、厄介物の侵入をこの工作物で防ぐ(キャッチする)ため」だそうです。←(息子談)

そう言えば、彼は私達の滞在中の間、頻繁に掃除機を掛けて床を清掃していました。彼は元来の『潔癖症』(神経質?)なので、その成せる行為かな?!と思っておりました・・・が、彼の名誉の為に申し上げますが、其れは誤認でした。筆者の家内曰く『家中の床がザラザラ・ベトベト』する感じだと言うのです。

砂浜に近い故の弊害とも言うべきか、ざらざらベトベトの犯人は『塩含みの砂』でした。そして件の工作物は、砂除けの柵なのでした。それはどう言う訳か『竹』製です。いわば『大きな簾』です。

左の写真は、茅ヶ崎の海岸に設置された竹柵。 右は、砂防柵の丸太支柱を竹の短冊で巻いた 様子。

砂浜際に砂防竹柵を巡らし、その背後は砂防林・防風林を配し、松を主体として広葉樹が植えられていましたが、防いでも防いでも尚、砂は侵入してくるのだそうです。

地元の方は『風に乗って襲来してくる感じだ』と嘆いていました。招かざる客ですが、砂問題は海浜近くに住む人の宿命です。しかも、微粒というかパウダー状なので始末には手を焼くため、厄介者、悪者視されていました。

後で調べたのですが、一方で、このパウダーは海浜砂を固める『バインダー』の役目をするほどに大事な存在の様です。(詳細は割愛致します)

それにしても、海岸の景色も砂浜の様子も40数年前とすっかり様変わりしており、その理由を翌日に早速に確かめようと思い、その夜のバーベキューも上(うわ)の空、勿論アルコールも超・控え目にして(苦笑)、早々に就眠し、翌朝四時に起床して海に行きました。

未だ暗いのに、星明かりの元に波乗り人が居ることに驚きましたが、其れはさておき、一目(ひとめ)・一瞬で理解した事は→①砂浜が極端に痩せている ②遠浅(とおあさ)で無くなった ③人工の突堤がある ④漂流物が少ない ⑤生き物が見当たらない(貝類も皆無で寂しい)・・・全体に言えば『汀線後退』です。 沖は深い様で、遊泳禁止。『波乗り(サーファー)族向け』の海に成り下がってしまっていると言うのは、私の様な『波打ち際遊び族』にとってみれば寂しいものでした。

茅ヶ崎の浜崖 茅ヶ崎海岸観察プロガ―さんの 画像を転用。高波で崩れた結果『砂崖』と化した 箇所の修復工事の様子

先述③の突堤は『ヘッドランド』と言うらしく、海岸の砂の流出を防ぐために建設される『人工岬』だそうです。河川から供給される土砂が減少したこと(山からの土砂生産量が遮断された)や、海岸にできた構造物(『人工岬』)によって砂浜が波の侵食作用を受け易くなって、沖へ運ばれた結果か、砂の侵食防止対策として日常化した『人工岬』が実は犯人かも知れないとも言われているようです。それが何故に、この湘南海岸に存在しているのでしょうか。

他所で聞いた話では、「河口に漁港を作った為に潮の流れが変わってしまい、砂浜の形状も変わった」「川から供給されてくる砂の堆積具合が変化し、件の砂浜の形状が変わった」など様々です。

その対策として漁港近くに堆積した砂を他所へ移す事が行われるらしいとも聞きました。更に、川の上流に設置した『ダム』から浚渫した砂(ダムの直下にためる(『置砂』と言うらしい)を海岸まで運ぶべく川の流れの中に投入する、或いは直接ダンプで運ぶなどして当該箇所に撒くという(『養浜』と言うそうです)ことです。

この分野に素人の私はそれを聞いて思わず『呆れて』しまいました!・・・何の事は無い、人の都合で自然をいじった結果、問題が発生しているに過ぎないのです。加えて、先述の『各種対策とか言って『余計な税金が使われている』何とも無駄の極致ではないかぁ!?と、憤りを覚えました。

 

そこで私は、フォレストベンチ研究会の栗原理事から聞いた話を、ふと思い出しました。

「砂が波に運ばれるに任せて置くだけでなく」波が運んで来る砂(漂砂)を捕まえる方法についてです。

浜辺の生態系を維持している砂浜が、山から供給されなくなって海岸線が後退すれば、浜辺の生命だけでなく、国土の損失が甚だしくなり、海岸線が大きく後退して生活圏が減っている国も数多い、何とか国土を守れないものか(そういえば理事の会社名は「国土再生研究所」です)と栗原理事は考えたそうです。

海辺で育った理事は、ザブンの寄せる波打ち際には砂の粒子が多く、ゴーグル無し泳いでいたとき目つぶしにあった記憶が鮮やかに蘇えると言います。その漂砂を掴まえるのに透水マットが使えないかと思い、行きついたということです。そう言えば、透水マットはかつて「吸い出し防止材」と呼ばれていたことを思い出したことにも助けられたそうです。海から砂浜を返して貰う方法は無いものかと考えた末に、粒径が250ミクロンを超える漂砂が、目の粗さが200ミクロンの『透水マット』を通過できないのではないかと、この方法を考えついたということです。

海岸線が、波の自然作用と陸地(山からの土砂生産)からの砂供給で形成され、バランスが取れていた時代から、温暖化による海面上昇や、高潮や潮流の激変で痩せ細って来たのなら、人工的な仕掛けを用いてでも砂浜は取り戻すべきではないか、重量物を海岸線に置くやり方は、波の浸食をむしろ加速して逆効果だと感じていた由です。

海岸実験マット透水装置

寄せては返す波は、風や気圧の変動によって浜へ打ち寄せるが、そのエネルギーは自然そのものです。その中で浮遊して運ばれる漂砂も自然の運動です。それを200ミクロンの透水マットで掴まえられたら人工エネルギー無しで陸地を取り戻すことが可能になります。これはやってみる価値があると思いました。やると決めたら、先ずは湘南海岸しかない、と。

透水マットは水を自由に移動させる機能がある一方で、砂や土粒子を止める機能をも有します。

これだけの役目で、その応用には驚くほどの展開の可能性があります。

やって見れば、様々なことが分るでしょう。失敗は元より覚悟ですが、エジソンの精神でやって行きたいものです。「私は、上手く行かないという方法を1万回発見したのであり、決して失敗はしていない」と言った心意気です。

 

地球の地形を元に戻すためのチャレンジでありワクワク感が何とも言えません。そのために、透水マットを敷き詰める竹籠造りに余念のない昨今です。

警戒区域指定解除への道
(株)コンシャス 代表取締役 伊藤 弘志

 

 気候変動に起因する災害は今年も各地で頻発しています。今年は、台風18号の低気圧の影響による大雨で鬼怒川等が破堤したことなど、未曽有の被害が起きて世間を驚かせましたが、斜面崩れに伴う災害も、昨年の広島や一昨年の伊豆大島のような規模ではないとしても、後を絶ちません。

国土交通省や各県ではその対策として、今年早々から「警戒区域指定」を早急に進めています。全国の危険斜面を洗い出す基礎調査に着手し、2019年までに警戒区域指定を終える計画を立てています。これまでに調査を終えた12県での途中集計結果から推定すると、指定される個所は65万件に達すると言われています。東京都でも警戒区域に指定される個所が約1万5千件と予測されていますが、その大半が八王子市に分布しており、6千件を超える危険個所があるとインターネット等で報道されています。

しかし警戒区域の指定はあくまで、災害時の危険を予告し注意を喚起して早めの避難を促すものです。昨年広島市で起きた災害を教訓に、警戒区域の指定が加速されたように見受けられますが、これは、あくまでも迅速な避難への効果(ソフト対策)を狙ったに過ぎません。

近年とみに凶暴度を増してきた気象災害を克服するには、斜面自体を強化するか住宅側の防備を強化するかしかありませんが、それには時間と財政措置の判断に時間を要しますので、取り敢えずソフト面での対応を図ったものです。よって、行く行くは物理的な対策強化というハード面での対策を図ることが必要です。

警戒区域に指定された危険個所には、時間が経つ程に何らかの手段を講じなければなりません。指定されても、解除する術が存在しなければ片手落ちです。被災する前に指定解除されてこそ、住民の安全は守られるのです。

 

広島市で起きた昨年の豪雨や一昨年の伊豆大島のケースでは、発生が深夜だったことが避難の遅れを増幅した可能性があります。深夜など避難が無理な時の豪雨に対処するには、自宅の中にいても安全が確保される工夫をする必要があります。

(無用な外力から免れる工夫)

指定解除に有効な手立ては、斜面自体を強化すること、次に、崩れた斜面から土石が家屋に押し寄せてもそれを受けて家屋の安全を保つことに集約されます。ここで、斜面の強化と家屋の防備には、共通する力学的なしくみが存在します。(下写真を参照)

その第一は、擁壁安定の首座に引張り耐力を据えることです。次に擁壁に掛る外力の内、水圧を除くことです。外力の6割強は水圧が占めるので、水圧を除けは土の圧力だけの4割で済むからです。土石を止めるとき水圧から解放されれば、斜面の下で家屋の盾となる擁壁が土石の直撃を受けても、家屋を守る機能は飛躍的に高まります。

(※詳細は実験映像のDVDをご覧ください。)

2014年10月1日 札幌市手稲区 王子木材緑化(株) 手稲工場 採石場での土石落下衝撃実験

(重量物より軽量な鋼材の引張り耐力が有利)

そして雨水は、人命や家屋の安全に致命的な被害を与えないことにも注目します。フォレストベンチの土の水平面や垂直面を通過してくる雨水は、土の隙間を通過し地中で濾過されて排出されるので、地表に出たとき清(静)水状態となり、泥水のように家屋や家財を汚して台無しにすることがありません。

 

家屋を守る擁壁を構成する資材には、引張り耐力に優れる鋼材を用いるべきです。これまで、斜面を安定させるには、コンクリート等の重量物が有利であると考えられてきました。

これは古典的な石積み等の名残りから来ているようです。

コンクリートは圧縮耐力に優れますが、引張り力に対しては殆んど無力です。そして、その重さも問題です。斜面崩れに対抗するとき、水平方向に10トンの力が必要だとすれば、重量として20トンが必要です。重量物は摩擦力や傾きによって水平力を出すしくみだからです。鋼材ならD22㎜の鉄筋で十分なため、コンクリートとの重さの比は2千倍となります。重いということは地震の際に、極めて不利です。

以上のことから、重くて引張り耐力を持たないコンクリートは、斜面を強化する資材として不適合と言わざるを得ません。

これまで鋼材を避けてきた理由として、錆の問題がありました。しかし、近年は亜鉛メッキやタフコート技術によって50年の耐久年数を優に超えることが明らかとなっています。

また、フォレストベンチ工法や透水擁壁施工の過程では、施工と同時に森を育成することを基本としていますので、20~30年後には木の根の引張り力が鋼材の引張り耐力を肩代わりします。

 

我が国は国土の7割程が斜面から成り、しかも火山灰などが被っているので地表は脆弱です。気候変動という人間の営みで生じた地球の異変を乗り越えるには、これまでとは違った手法で有効な策を打ち立てる必要があります。対象は広範であり、自然の営みを壊さない工夫を講じないと、気候変動の是正に逆行する可能性も懸念されます。

国土強靭化の願うところは、人々の安全・安心な暮らしです。全ての警戒区域が解除された時に初めて、人々は気候変動から解放されることになります。今後も、このようにフォレストベンチ工法に備わる機能が警戒区域指定解除に向けた着実な一歩となることを願い続け、有益な情報を提案していく所存です。

 

 

現場だより

〇日野市の現場には、近隣の市町村からの見学者が次々と訪れています。台風18号が過ぎ去って、河川堤防決壊だけでなく、斜面崩壊にも警戒感が高まったことによると思います。

 

〇斜面崩壊への最大関心は、昨年の広島市や一昨年の伊豆大島における人命・財産の損失回避にありますが、危険と分かった斜面にどのような工夫を施したら安全になるか、多くの人達が興味を持たれている証拠です。

 

〇フォレストベンチ工法を施工し始めて、5~6年過ぎた頃、住宅周辺への適用相談を受けてから、崖条例の存在を知りました。

 

〇土砂災害防止法の一環として、“急ごしらえ”で設けられたもののようですが、擁壁によって崖を安定させるなら、コンクリートを基本とするように書かれています。コンクリートが“重量で”いかにも石垣と同じ機能を持つと早合点した結果のまま、今日に至っています。

 

〇特別警戒区域の指定についても、それをベースに組立てられているので、透水性や引張耐力が有効であるという点には、今のところ全く触れられていません。

 

〇全国に65万箇所の危険斜面が登録される一方で、それをどのように解除するのかについて、課題は先送りされたままです。

 

〇当研究会では、昨年10月に実物実験を実施するなど有効策を模索して参りました。今後もこの課題について研究して行きたいと願っています。

 

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


関連記事