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STEP(HTML版)

STEP(第177号)

フォレストベンチ研究会の皆様へ
フォレストベンチ研究会 事務局長 大台哲夫 (法人会員 中林建設㈱ 総務部 次長)

フォレストベンチ研究会会員の皆様、はじめまして。

先日の総会において前会長の村井先生より、出席者の方々には紹介いただきましたが、このたび、事務局長をさせていただくことになりました大台哲夫を申します。

本来ならば、総会後の会報には、新しく会長に就任された村沢義久先生のご挨拶が掲載されるはずでしたが、村沢新会長が総会後も大変お忙しいとのことで、今回は新事務局長としての私がご挨拶させて頂くことになりましたことをお許し頂きたいと思います。

最初に少しだけ私の職場を紹介させて頂きます。私は、当研究会の法人会員で大阪に本社を置く中林建設株式会社で仕事をしています。当社は大阪府内を中心に主に近畿圏において、沢山の土木工事・建築工事をさせて頂いています。私が席を置くのは総務部です。総務部と言いましても、私のセクションでは、工事部門や営業部門のフォローをすることが主な仕事で、一般的にイメージされている総務や経理、人事と は少し違った仕事をしています。総務部の中でも現場に近いところで仕事をしているため、当社が全天候フォレストベンチ工法と出会い、栗原理事と共にさまざまな活動をしている場面を少し近くで見ている総務部です。ゆえに、全天候フォレストベンチ工法の現場写真、プレゼンテーションの資料、技術展での展示物、新聞広告など、普通の総務ではあまり目に触れる機会のないものを、私は近くで見ていると思います。この会報『STEP』も毎号読ませていただいておりました。

全天候フォレストベンチ工法に出会う前の私は、普段車を運転しているときによく目にするコンクリートで補強された斜面を見ても全く疑問を感じず、硬いコンクリートだから斜面防護には最適なんだと思っていました。ただ、このような斜面を見て、その醜さに残念だなという想いは持っていました。

その後、会社の仕事の一環として、全天候フォレストベンチ工法についての資料を読んだり、写真を見たりしても「こんな工法(失礼!)で本当に斜面は守られるの?」と眉唾ものでした。柔らかい土で斜面を守ることができるなんて全く信じられない思いでいました。

そんな私の疑問を打ち破ったのが、あの『3.11』でした。東日本大震災発生時、私は大阪の本社で強い揺れを感じました。『1.17』以来の揺れに驚き、「また神戸か?」と慌ててネットを検索すると、なんと場所は東北。それからは町を飲み込む津波の映像に恐怖するしかありませんでしたが、後日、高さ15mもの津波から住民の方を守ったフォレストベンチの写真(これは気仙沼の畠山理事のお宅でした)を見て、「これは本当にすごい技術なんや!」と信じるようになりました。

今回、初めて総会に参加させて頂き、理事の方々の講話や、会員の皆様の現場報告を聞かせて頂き、その中で共通して感じたことは、会員の皆様の『土』と『緑』への強い想いでした。緑と土で覆われた斜面は、海で生きる生物の命をも守ることに繋がっているという畠山理事のお話や、日本の伝統文化である自然との共生を実現できる「緑の防潮堤」こそが次世代に残すべき財産であるという日置理事のお話も、危うく涙ぐみそうになるくらい心にぐっとくるお話でした。お話をお伺いしているうちに、全天候フォレストベンチ工法はこれら全てを実現できる可能性がある『土』と『緑』を用いた技術だと改めて感じることができました。

今後は、全天候フォレストベンチ工法の開発者である栗原理事には、当工法を更に進化させるための研究に専念して頂くとともに、同じ志を持たれる当研究会会員の皆様の希望である『土と緑の斜面』を、次世代の子ども達により多く残すことができるように、村沢新会長の下、事務局としてバックアップさせて頂きたいと思います。

まだ新しい事務局として出発したばかりで、どこまでできるかわかりませんが、目の前にある問題点をひとつずつ解決して、当研究会が更に発展し続けていけるように努力して参ります。

会員の皆様方には、今後ともお力添えを頂きますよう、よろしくお願い申し上げます。

日野プロジェクトを振り返って
個人会員 ㈱国土再生研究所 入井徳明

日野プロジェクトは去る5月21日、現場に元請け関係者・日野市担当及び検査官を迎え一連の検査が執行された。約一時間余り、工法の概要聞き取りから始まり、現場の目視による外観検査、ベンチ各段の踏査が行われ特に問題も無く終始し、最後に検査官の「市民の安全を守る法面の崩壊防護工事は完了し、検査については合格といたします。」の言葉で完了となった。

本工事は1月19日に元請け滝沢建設㈱が日野市より受注し、2月2日現場乗り込み、4日に元請けによる安全講習が行われ、安全仮設フェンスの建込み及び透水衝立段切りを開始し実質上の本格作業に入った。大雑把な実施工程としては、透水衝立部2月末完了、№1~№5フォレストベンチ3月末完了、被覆間伐材・竹材取り付け及び法面防護竹柵他雑工事4月下旬完了、続いて5月初めの連休明けより完成図書類の提出準備作業に入り、5月19日元請けより市へ提出し21日の完成検査及び引き渡しとなったものである。

日野プロジェクトの特徴をあげれば次のようなものとなる。

 

1.本邦初となる透水衝立方式の採用

昨年10月に北海道手稲の採石山ズリ堆積上で行われた実証試験は、40トンダンプ2杯、計80トンの砕石を落差30メートル、傾斜角凡そ40度の斜面に投下したものであるが、法尻に設けられたアンカー及びワイヤーで固定された受圧板は落石の衝撃によく耐えその耐衝撃性が証明された。一方日野の斜面は標高20mの傾斜地にあり、斜面最下部の住宅地背面に高さ5m傾斜角60度のコンクリートブロックが設置され、ブロックから上の斜面は平均勾配38度の法面で、所々小規模な崩落の跡も存在した。予測されぬゲリラ豪雨などによる土石崩落等の懸念から、最下部については崩落の衝撃を吸収し、かつある程度の崩落土石を堆積できるポケットを持つ透水衝立方式を採用し、次に続く №1~№5フォレストベンチ工事完了までの期間をより安全に保つための方策としたものである。

 

2.大幅な設計変更

参考までにBefore・Afterの平面図・断面図を添付した。日野市からの図面は求積図のみで高さの記述はなく、当初設計は高低差を10m程の予測でベンチの段数を設定(4段)し、しかも敷地全面にベンチを分布させている。

昨年12月初めにポール横断による概測を実施したところ、最高部は高低差約15m、しかも法面を東西に走る幅1mの階段の存在が判明した。このため設計を根本から見直し次のように変更した。

①ベンチの配置を階段から下の斜面に配置する。

②標高差が最高部で10mから15mとなったため、フォレストベンチ高さを1.5mから2mに変更し、段数を3段から5段に増やす。本来であればベンチ天端と次のベンチの下端は水平であるが、ここでは0.5mの高低差を設け1段当たりの高さを稼ぐ。

③ベンチ両端部(褄部)の補強の為の受圧板を設け支圧板アンカーで補強する。

④フォレストベンチに竹材による被覆を採用した。

最下段の透水衝立には下部住民側の景観に配慮し高さ1mの間伐材を取り付けた。今回フォレストベンチには高さ1.5mの竹材による被覆を施し緑地としての景観を更に向上させた。

⑤この結果入札時の仕様と竣工時の仕様及び数量の違いは下記のとおりである。

 

入札時 透水衝立     H=2.0m L=60.0m A=120.0㎡

フォレストベンチ     H=1.5m L=231.0m A=346.5㎡

竣工時 透水衝立     H=2.0m L=57.0m A=114.0㎡

フォレストベンチ     H=2.0m L=146.8m A=291.6㎡

竹材被覆         H=1.5m L=146.8m A=220.2㎡

(褄部)透水衝立      L=6.4m A=8.3㎡

フォレストベンチ      L=20.7m A=21.4㎡

今回は元請けとの契約で事務作業も含めその大方を当方が負担するということになり、慣れぬ作業で混乱を生じた。元請けより各書式のサンプルを入手し、指導を受けながら随 時作成していったがその種類、数の多さに辟易した。民間とは異なり官庁業務に対応するにはそれなりの体制・人手と慣れが必要であることを痛感した。着工前の施工計画書作成で先ずつまずき着工の遅れ、竣工時には竣工検査に必要な完成図書の編集作業がこれまた不慣れなため混乱した。一応一通りの流れは把握できたので次に備え効率の良い早めの対応を心掛け、内容の標準化を進めなければならない。

工事以前の調査体制が必要である。高さ・距離の把握は最小限必要な要素で、これにより平面・断面・立面といった設計の要素が固まり工事量が決まる。

日野プロジェクトは大島技工とそれを取り巻く関係者の努力で現場は無事故・無災害のうちに工事完了となった。

地域との関係も良好でご近隣の人たちも協力的であり、㈲大島技工の大島社長以下工事関係者のソフトな対応が功を奏したと考えられる。懸念されたゲリラ豪雨は無く天候も大崩れすること無く、現場作業は比較的順調に推移したと言って良い。地形に逆らうことなく適度にアールを描いたベンチのルートは大島Gの傑作である。被覆竹材をはじめ工事の仕上がりも好評のようで欣快に堪えない。

㈱コンシャスの伊藤さんの参加で書類の整理をはじめ通信その他電子化が進み効率が良くなった。隣の敷地はフォレストベンチにうってつけの地形で次の着工を期待する次第である。

斜面にも免疫効果があったとは・・・・・・ (2)
熊谷市福祉環境コーディネーター 加藤良子

先月号でも申し上げた通り、私は栗原さんが長年通っている埼玉県熊谷市内の病院で働く介護福祉士です。栗原さんの週に一度のリハビリのお手伝いをしながら伺ったフォレストベンチ工法についてのお話の中で、栗原さんが今年4月におっしゃった「斜面に免疫のような効果が感じられるのですが、聞いてくれますか」という言葉から、あらかじめ免疫力を備えておけば、【未然防災】も可能ではないかとのお話に展開したことで、私はこの、免疫という言葉に大変興味を持ち、改めて考えてみました。

免疫学の元祖ジェンナーは、牛の乳搾りに従事する農婦が天然痘を発症しないという事実に基づいて、1796年に8歳の少年に牛痘を接種したところ、天然痘に対し免疫になることを実証し、種痘法を発明し天然痘撲滅の道を拓きました。そして1980年5月、天然痘は地上から消滅したことが公式に宣言されました。凡そ200年の歳月を経て人類は天然痘から解放されたことになります。

斜面災害の方は、気候変動が原因であり、広島市のような災害は日本の何処で起きても不思議ではない、とのことです。あらゆる斜面が免疫力を持たずに、昨今のように急速に熾烈になった豪雨を受ければ、成す術もなく崩壊するでしょう。栗原さんによると、47都道府県に土砂災害警戒区域が65万箇所あるそうで、(国土交通省調べ)それらを被災後に修理していては、人命や財産の損害の大きさだけでなく修復に要する費用は、莫大なものになると危惧されています。

栗原さんの言われる斜面安定への免疫力とは、大気圏の外気をそのまま地中へ導けば、それだけで雨水の充満を防げるというものです。それは自ら体験した潜函法に結びつくとのこと。潜函法とは、土木作業員が水面下で仕事するときに、水の壁を大気の圧力で押し返してできる大気空間のことです。晴れの時に地中の大半を占める地中空隙に外気を導いておくと、大量の雨水が浸透した時に、それを収納するスペースが生まれ水圧の上昇が緩和されるという仕組みです。それが免疫力になれば、水と共に自然に満ちている大気を用いる極めて安上がりです。全天候フォレストベンチに採用されているそうです。

それにしても、生体でない斜面土砂に免疫力を持ち込もうとは、何とも栗原さんらしいユニークな発想です。ジェンナーの牛痘法は「二度無し」療法と言われており、日本の著名な学者も研究に参画され、今日の医学の礎になっています。気候変動に伴う斜面災害が、「大気圧の導入」というワクチンによって「二度無し」効果を発揮すれば、「未然防災」が地球の自然力で実現することになるという、栗原さんの説には大変な説得力があります。元々、先人が残した棚田から発想した全天候フォレストベンチ工法が、医学界で生まれた免疫力というエキスの応援で普及することになれば、人類一丸となって気候変動を乗り切ることになります。

尊い命や財産を守るには、何と言っても「気候変動による災害」を未然予防すべきであり、その経済効果は事後処理よりも大幅に向上するはずです。しかも全天候フォレストベンチ工法は、本来が平地と森を造設する土木工法です。地球環境を改善する機能が徐々に効果を発揮して、気候変動が元に戻る可能性も期待できます。仮に天然痘のように200年の時を要したとしても、斜面災害を地上から無くす研究に真摯に取り組むことこそ、後世への努めでは無いかと言われる栗原さんの言葉に感動し、応援して行きたいと思った次第です。

全国の現場を直接訪れたいという強いお気持ちから、リハビリに励んでおられる栗原さんのご健康と、フォレストベンチ研究会のますますのご発展を、お祈りしております。

有孔管による大気圧の導入 段切り面へ敷設される有孔管は、地中水に 下から大気圧を及ぼして“地中水位”を除去 するのが役目。
個別の水滴と化した水は 圧力を生むことが出来ません。

有孔管の出口からは、大雨のとき、余剰水が 排出されますが、土砂空隙内を通るとき、
ゆっくりした動きになって、その多くが地下 水脈へ入り込みます。

 

事務局だより

◆6月26日に行われた16回通常総会は、研究会創立以来の記念的総会になりました。

◆村井会長の退任と村沢新会長の選出に加えて、事務局の刷新と共に大台事務局長が就任され、研究会の機能が大きく補強されました。これによって、創立以来迷走し続けてきた事務局機能が、一新されることになります。

◆村沢新会長は早速、会員の増強策に取り組まれることを表明され、また全天候フォレストベンチ工法の景観性をアピールして、観光立国に相応しい斜面の創造に取り組む方針を掲げられました。

◆他の斜面防護工には存在しない景観性をアピールして、世間への認知度を高めようという方針です。

5年後のオリンピックや海外から観光客向けに、最も見劣りする斜面を日本の美に加えることは、大きなインパクトがあります。

◆課題山積ですが、間伐材に加えて竹を用いる表面被覆に、大きな可能性が潜んでいるようで、夢が持てると思います。

◆村井前会長は顧問として、引き続きご指導を戴きますので、心強い限りです。宿題になっていた問題についても、一つ一つ解決して行きたいと考えています。これからも宜しくお願い申しあげます。

 

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