この秋、千葉県を襲った3度の台風と豪雨。これから学ぶべきもの

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個人会員 戸村澄夫

千葉県を襲った3度の台風・豪雨。9月9日に台風15号が猛威を振るい、高圧線の鉄塔を倒壊させ、コンクリートの電柱をなぎ倒し、市原市ではゴルフ練習場の鉄柱を倒して複数の民家の屋根を破壊する事故まで引き起こしました。

ゴルフ練習場の鉄柱が複数の民家を破壊した

そのあと10月12日に台風19号が続き、前の台風で屋根が飛ばされて覆われたブルーシートを再び強風で剥ぎ取り、家の中に滝のような雨を降り注がせました。さらに、その2週間後の10月25日に台風21号(豪雨)が被災地を容赦なく襲ったのです。

道路は川のように濁流が流れ、多くの住宅で床上まで浸水しました。台風21号だけで、福島県と合わせて死者10人、行方不明者2人という惨状でした。

千葉県では、これまで比較的台風や豪雨による災害は少なかったのですが、今度はこれでもか、これでもかと狙い撃ちされた感じです。

もう、日本中どこでもここは安心というところはなくなりました。

おりしもフォレストベンチ研究会の栗原理事より、新潟大学工学部大熊孝名誉教授の「新潟豪雨災害から今後の治水を考える」という論文を送っていただきました。

新潟大学大熊孝名誉教授の論文
(平成18年の新潟豪雨災害を経験しての論考)の主旨

  • 異常気象による豪雨は、これまでの経験に基づいて計画的に設計された河川の堤防の高さや強度をはるかに超えた規模で襲ってくる。
  • それも九州地方とか四国地方とかの地域を限定されたものではなく、新潟でも北海道でもあらゆるところで起こりうる現象である。
  • したがって、完全にこれに備えることは不可能である。新潟の豪雨災害を見て思うのは、河川の水位が上昇して堤防を越流したところでは、床上浸水や床下浸水程度は起きていても激甚な災害は起きていない。
  • 堤防が決壊したところでは、天井まで浸水し、あるいは家が流されるという激甚災害が起きている。
  • これからの治水対策は、ある程度の越流は許しても破堤させないことが重要である。上流で高堤防によって完全に越流を防げば、下流では水圧が増加して破堤の危険度が増大することになる。
  • 計画規模をはるかに超える超過洪水に対しては、破堤させずに越流氾濫の被害を全流域で分散・分担することである。
  • 具体策としては、「堤防沿いに樹林帯を設けて、水害防備林で流速を弱め、土砂も樹林帯の中でろ過・沈殿させていけば大規模な破堤は起こらず、被害を相当緩和させることができる」というものである。
  • 河川敷に樹林帯を造り、エコロジーに貢献するこの工法はまさしく、斜面に水平面を作り植栽して土砂災害を防止する「フォレストベンチ工法」と軌を一にするものである。

・私の視点

私の住んでいる近くに飯山満川(はざまがわ)という川幅4mほどの2級河川が流れています。普段は住民の生活に溶け込んだ極めて静かな川です。

数年前の豪雨で、越流して300戸ほどある住宅街の道路に泥水が流れ込んだことがあります。当時自治会の役員をしていたこともあり、住民の意見を結集して、二度と起こらないようにと防止策を県に申し入れました。具体的には、飯山満川の水位が上昇した時に、氾濫しないように護岸の一部をかさ上げするとともに、調節池を作って自動的に調節池に流し込む対策を講じていただきました。2年後完成を目指して現在工事進行中です。

普段は静かな飯山満川(はざまがわ)

「河川の修復工事は、下流から整備していくのが鉄則である」という大原則の中で、当時の県の責任者が、「そうは言っておられませんね」といって数億の予算を割いて現在の工事に踏み切ってくれたことに深く感謝しておりました。今回のことで、大熊教授の「現在のような計画規模を超えた超過洪水では、被害を集中させるのではなく流域で分散・分担する覚悟が必要だ」という論には、目のうろこがはがされた感じがしました。

私は、飯山満川の洪水対策が講じられて二度と同じことが起こらなければよいという、目先の自分の周囲のことしか考えておりませんでした。現在のように、地球規模で災害が大規模化し、いたるところで発生する可能性のある現状では、私のような局部的な対処の仕方では“いたちごっこ”に過ぎないということを知ったのです。大規模化した災害の発生を防ぎようがないのであれば、被害を特定の地域に集中させて壊滅的な被害にするのではなく、被害を分散・分担して軽減を図る知恵が必要だと思います。

県の災害担当の責任者にも、ご参考になると思い、この論文をお送りいたしました。多くの人がこういう認識に立つことによって、ますます巨大化する災害を克服していきたいと念じております。