宮脇昭先生の復活

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フォレストベンチ研究会 理事 輪王寺住職 日置道隆

平成31年4月14日(日)、神奈川県秦野市の栃窪スポーツ広場にて、「宮脇昭復活植樹祭」が催されました。宮脇先生は御年91才、横浜国立大学名誉教授であり、著名な植物生態学者です。宮脇先生は、自らの理論と植樹方式を実践すべく、国内外約1700箇所4千万本以上のふるさとの木々を市民とともに植え続けてきました。平成16年から5年間行われた輪王寺の森づくりを御指導いただき、3万2千本の土地本来の苗木を市民と共に植えました。今ではりっぱな森に囲まれたお寺になっています。4年前不幸にもご自宅で倒れられ、今現在施設にて懸命にリハビリに勤しんでおられます。この日は4年ぶりに復活された植樹祭でした。

当日400名以上の参加者によって3000本のふるさとの木々が植樹されました。開会式では、車いすから介護士さんの手を借りながらも立ち上がり、参加者に向かいしっかりと語られ、病と闘いながら、老骨に鞭打って懸命に私たちにメッセージを伝えてくれました。

植樹祭で車いすから立ち上がり、懸命に挨拶される宮脇昭先生

「緑の植物からなる森は、生態系の中の唯一の生産者です。人間を含めた動物はすべて消費者であり、生産者の植物に酸素と栄養源を頼っています。どんなに科学・技術を発展させ、富を手に入れても、私たち人間は他の動物と同じように、緑が濃縮している森に依存しなければ生きていけません。土地本来のふるさとの木々によるふるさとの森は、私たちの生存基盤です。いのちの森づくりは、いろいろな種類の苗木を混植・密植することにより、10年から20年を経ると木々が生長し、多様性のある森になります。このような森こそが、台風地震・津波などのあらゆる災害から私たちを守ってくれます。…中略…皆さんが主役です。ともに額に汗し、大地に触れて、足元からいのちの森をつくっていきましょう。」

と呼びかけました。身体が不自由であるにもかかわらず、言葉が途切れ途切れになりながらも、時にジョークを交え必死に参加者に語りかけるお姿に、参加者全員が感銘を受け、さらに理屈だけではないなにか、そして内から沸き上がる凄まじい迫力と精神性を感じたのではないでしょうか。

筆者の娘と植樹される宮脇昭先生

潜在自然植生理論とは、植物生態学上の概念、一切の人間の干渉を停止したと仮定したとき、現状の立地気候が支持し得る植生のことを言います。1956年、ドイツの植物学者ラインホルト・チュクセンによって提唱されましたが、この概念を実際の植生回復へ応用する試みがチュクセン氏に師事した宮脇先生によって始められました。この概念からみると、もし日本に人間が住んでいなかったら、国土の98%が森になると宮脇先生はおっしゃいます。

つまり日本国土の自然はほとんどが森なのです。

永年無骨なまでに続けてこられた宮脇先生の「ふるさとの木によるふるさとの森づくり」活動は、東日本大震災後に「森の防潮堤」構想へと発展しました。海岸線に被災瓦礫と土を混ぜて埋め盛土して高台をつくり、そこに土地本来の高い木から低い木までいろいろな種類の木々を植えて多層群落の森を形成し、津波から私たちの生命と心と財産を守ろうという構想です。森の防潮堤は、それ自体が丸くて柔かく湿っていて活発な生き物の塊です。地下も木々の成長と共に土壌生物や菌類が網羅され、絶えず生滅を繰り返し世代交代しながら人類生存中は存続します。生物である森の木々はしなやかさを武器に津波の力を減殺します。高台部分も生きた土にしっかりと木々の根を張り地盤が安定し、永年我々を洪水や津波などの災害から守ってくれるのです。

フォレストベンチ工法によって2009年に施工された輪王寺の斜面は立派な森に(2019年5月)