自然と人間社会の両立を

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フォレストベンチ研究会 宮崎支部長 川添祐一郎

この度、宮崎県議会に設置運営されている「防災・減災対策特別委員会」で、意見陳述の機会を戴けたのは、先のステップ第200号に掲載して戴いた「美しい海岸線を守る海中防潮堤への期待」という私の記事に目を通された本会会員で宮崎県議会議員で同委員会の副委員長である「河野哲也」議員のご判断によるものであり、心より厚く御礼申し上げる次第です。

10月半ばに議会事務局から栗原理事へ連絡が入り、その後に議会議長からの正式な要請文が届き、全天候フォレストベンチ工法が宮崎県の防災・減災に寄与する内容について、意見を伺いたいという連絡を受けたようです。

理事は宮崎県出身であり、コンクリート漬けにされている国道220号の切土のり面の自然回復のこと、近年の豪雨による土石流災害の予防策、そして最大の懸案である南海トラフ関連の巨大津波に関して、以前より深い想い入れがあったので大層な喜びようでした。

宮崎県人の性格や心を知り尽くして理事は、青島の周囲に拡がる“鬼の洗濯板”に心を寄せる県民の命を如何にして守るか、津波よけの防潮堤のことに強い関心を持ち続けていましたので、早速私にその具体的形状をCADで図化する作業が舞い込んできました。 

手書きの下絵を読み解くのに多少の時間を要しましたが、コンクリートを用いないこと、反力を水中アンカーに求めること、札幌で実験した透水性鋼製柵が主体となることを伝え聞いていたので、割合スピーディに図は仕上がりました。

しかし海で初めて使用するものであり、より分り易いコンセプトで可能性を説明する必要があります。理事は幼少の頃、津波を体験した想い出や、自ら実験して学んだ成果を収めているDVDを織り交ぜて、プレゼンを構成していました。海中防潮堤の主役である透水性鋼製柵を①普段は海面下に伏せておき、②自然力で直立させ、③津波に対しては強靭な抵抗を示す構造を造り上げるのですが、そこには解決すべき多くの課題が潜んでいます。その諸問題に実験を通じて可能性を見出そうというのが、今回提案の骨子です。未知の世界へのチャレンジをモットーとする栗原理事の基本は、自然遺産と人間の営みとを両立させる“技術”を見出そうとする意欲です。

宮崎平野は標高ゼロメートルに近く、東側の海域に津波に抵抗する自然地形が全くない独特の平野です。しかもそこには、3千万年を経て存在する天然記念物の「鬼の洗濯板が“最大の観光資源”として横たわっているのです。理事の構想は、百年に一度という巨大地震に備えるに、日々の暮らしを支える観光資源”、そして後世に残すべき自然遺産を犠牲にすべきでない、という発想に立脚するものでした。

東日本大震災後に“三陸海岸”の防災計画に関係した際にも、海の生き物と共生出来ないコンクリート製の防潮堤に疑問を持ち、砂を盛り上げて緑の森から成る“松島”のような防潮堤を提案しましたが、過去に事例がないことや、国家財政を背景とする行政に寄り切られてコンクリート防潮堤が採用されました。

現在建造中の400キロに及ぶコンクリート防潮堤が完成したとき、海の景観と海の生命を失った三陸海岸は、北海道の奥尻島のように悲惨な末路を辿るであろうと懸念しています。 我が国は海に囲まれた海洋国家であり、そこの生命を失ってしまえば、次に人間が滅ぶのは、火を見るより明らかです。

コンクリートの使用法を間違った結果、人間の将来を危うくすることは、何としても、避けねばなりません。 津波から命を守ることは、鬼の洗濯岩と共存してこそ、意味のあることだと思った次第です。

「海中防潮堤の図」横断図