コンクリートのり面の点検が始まった

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個人会員 入井徳明

先日、栗原理事と会った。目を輝かせながら「国土交通省がコンクリートのり面の点検を本格的に始めるそうだ」という事、又 「その機運に乗り宮崎県議会に対し、新しい方式によるのり面の恒久化を訴えるのだ」と聞かされて、コンクリートのり面を緑に戻すことに執念を燃やし続けている彼の想いに、更なる力強さを感じたものである。約50年前、一緒に飛び込んだ土木の世界で、ダム、橋梁、トンネル、道路、港湾などコンクリート工学は無くてはならぬ花形分野であった。建築も含めたあらゆるモノづくりで、コンクリートの扱いを知らなければ、一人前の技術屋とは言えない時代だったのである。しかし彼は、入社した道路公団の担当現場で、コンクリートをのり面には使わなかったということであった。以下私が彼から受けた報告をかいつまんで述べることとする。

この度彼は宮崎県議会の防災・減災特別委員会に招聘されたが、その代表的テーマに選んだ一つに、“コンクリートのり面に替わる新しい技術を用いたのり面の恒久化”を挙げていた。彼に取っては、大学が休みとなり故郷の日南へ戻る度に、幼い頃慣れ親しんだ美しい海岸線の国道220号が灰色に変わって行くことに誠に心が痛んだそうである。道路公団で受け持った現場でも、のり面にコンクリートを使うことは極力避けたようであるが、唯一東北道の盛岡の現場で、中世期の山城跡の保存に当たり、連続地中壁を使わざるを得なくなり、一度だけコンクリートを用いたとのことであった。 これは、弁当箱のような(厚み60㎝深さ11m)コンクリートの垂直壁を高速道路の側方に立て、地中アンカーで固定する工法である。ところがそのとき学んだアンカー技術を、現在のフォレストベンチ工法に繋げ、コンクリートのり面にとって代わる革新技術の発明に繋いだところに、一貫してコンクリートを排し緑の森をイメージする彼の真骨頂がある。

国土交通省がコンクリートのり面の点検に本腰を入れた背景には、今年6月に大阪で起きた地震でブロック塀が倒れて女児が下敷きとなり亡くなった事故が契機になっていると考えられる。国道220号沿いあるいは神奈川県山岳道路沿いなど、高所に施工された長大コンクリートのり面が50年を経過し、劣化して落下すれば、そのエネルギーはブロック塀の比ではない。宮崎の炎暑・潮風・豪雨など他所を上回る厳しい気候条件が加わると風化劣化がスピードアップし、その耐久性は50年を下回る可能性は十分に考えられる。

宮崎県議会との会議後日南へ向かう道中で、切土のり面の修復が行われていたが、残念ながら修復工法は相も変わらずフリーフレームであった(写真-1)。

(写真-1)国道220号線の日南市にある鵜戸神社の北(宮崎市寄り)の切土のり面では、またしても”フリーフレーム工法”が採用されていた

残念なことに、斜面に水平面を確保して緑を育て、恒久安定ののり面を目指そうという機運が育つどころか、折角の点検とやり替えのチャンス到来とは逆に、現実は従来工法の繰り返しである。

国道 220号バイパスの青島パーキング (写真-2) で10年前に施工した階段状のり面の展望台では、緑が森を成して来客を待っている。この事例を活用して水平面の意義が広められないものか?

(写真-2)青島バイパスの中ほどにある青島地区を見下ろすパーキング場の横に、12年前に竣工したフォレストベンチ(5段)は、水平面に植えた苗木が立派に育ち、見事な展望台になっていた。

国土交通省でコンクリートのり面フリーフレームの景観が自然に調和していないことが分かっていても、それに代わって恒久の機能を持つ技術の存在が知られていなければ、チャレンジしようという声は生まれようがない、という悔しい思いが募ったが、今回の防災・減災特別委員会との縁を通じて、恒久安定のり面が宮崎県には不可欠であることを説くべきであることを痛切に感じた。そしてそれが中国雲南省の世界一の棚田やマチュピチュ のよう に世紀を超えて後世に伝えられ、子孫の暮しに役立つ社会資本として 崇められる存在に成ることを強く願っている。